クロマグロ完全養殖、大手相次ぎ参入 安定供給の「救世主」なるか

 
いけすでクロマグロに餌やりをする「ツナドリーム五島」の担当者=2017年12月、長崎県五島市

 クロマグロの完全養殖に大手企業が相次いで参入し、出荷が本格化しつつある。日本近海などに生息する太平洋クロマグロをめぐる漁獲規制が強まる中、これまで養殖の主流だった天然稚魚の使用にも制限が掛かっており、人工的に卵を孵化(ふか)させる完全養殖に安定供給の救世主として期待が集まる。海外に販路を拡大する動きも出始めた。

 養殖出荷量が都道府県で全国1位の長崎県。2017年12月中旬、五島市の元漁師らが海上に浮かぶ直径約30メートルの円状のいけすで、クロマグロの匹数や餌を細かく管理していた。ここでは豊田通商の子会社「ツナドリーム五島」(同市)が近畿大と業務提携し、10年から完全養殖を開始。市内に3カ所の養殖場があり、近くの陸上施設でふ化させた数キログラムの稚魚をいけすで成魚に育てる。

 成長に応じていけす内の収容匹数を少なくすることでマグロのストレスを軽くするよう工夫しており、担当者は「くせのない脂に仕上がる」と品質に自信を見せる。40キログラム以上に育ったものは「近大マグロ」のブランドで全国に出荷している。

 クロマグロの完全養殖は商社や食品といった大手企業も手掛ける。背景にあるのが、12年度に始まった養殖天然稚魚の投入数やいけす数に関する規制だ。このため人工的にふ化させた稚魚を使う動きが加速し、水産庁の集計で14、15両年には使用数で天然稚魚を上回るなど、存在感が高まる。

 マルハニチロは鹿児島、三重、大分の各県などを産地に「BLUE CREST(ブルークレスト)」の名前で15年度から出荷を開始した。日本水産は「喜鮪金ラベル」の出荷を準備しており18年度に1万匹を目指す。

 「近大マグロ」を出荷する豊田通商は海外市場も見据えており、20年に東南アジアを中心に約2000匹の輸出を狙う。ツナドリーム五島の高橋誠代表は「養殖の生産技術は今後も革新がある。漁獲量の変動が大きい天然産を補うことで、国内漁業の維持や成長に貢献できる」と強調する。

 仲卸業者には天然クロマグロの質をより好む声も依然として根強いが、養殖ものは年間を通じて安定した品質を供給できるのが強みだ。

 政府は農林水産物・食品の輸出を年間1兆円に増やす目標を掲げており、完全養殖クロマグロも有望品となり得る。食品スーパー阪急オアシス(大阪府)の幹部は「トロなどの高級部位は、国内だけでなく海外でも人気が高い」と供給が安定的に確保できれば大きな商機につながると指摘した。