ベストセラー作家に聞く「2018年問題」 現実となる「大学倒産の時代」…母校なくなる?
新年を迎えて半月、受験シーズンが到来した。先日の大学入試センター試験では、「地理B」でムーミンの物語の舞台を訊いた問題は「出題ミスだ」という声が多数上がるなど、入試をめぐり早くも波紋を呼んでいる。
ところで、日本の諸大学にとって、2018年は危機的局面を迎える一年になるということをご存知だろうか。将来推計人口データにもとづき日本の先行きを展望したベストセラー『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社現代新書)の筆者である産経新聞社論説委員・河合雅司氏が2018年を契機に起こると予言する「大学淘汰の時代」についてご紹介しよう。
◆私立大学の4割は定員割れ
「母校が消滅する--そんな『大学淘汰の時代』が、いよいよ現実のものとなりつつあります」と、河合氏はこう指摘する。これまでも人口減少、定員割れ、経営難など、大学運営をめぐり数多くの警鐘が鳴らされてきたが、2018年以降、事態はより深刻化するというのだ。
主な大学進学者となる18歳人口は、実は、2009年以降は120万人前後と“踊り場”にあったが、2018年あたりから再び減り始める。2024年の約106万人でいったんとどまるが、2027年から再び大きく減っていく。2032年には98万2000人まで下がると予測されている。
「わずか15年ほどで20万人近くも減るというのは、仮に、大学進学率が50%だとして10万人の減。入学定員1000人規模の大学が、100校も消滅する計算です」とし、大学が倒産に追い込まれる流れは加速していくと河合氏は予測する。
実際に、私立大学の4割は学生確保に苦慮している。日本私立学校振興・共済事業団の「2017年度 入学志願動向」によると、定員割れとなった学校数は前年度比28校減の229校となった。充足率が若干改善した背景には、文部科学省が定員超過した私立大学への補助金不交付基準を厳格化したことがある。これにより都市部の大規模私立大学が定員を抑制し、入学者が地方の大学に回ったとみられる。
それでも私立大学全体の割合でみると、39.4%は学生を集められない苦境に陥っており、「いずれ私立大学が半減してもおかしくない状況にあります」と河合氏は危惧する。
◆なぜいまさら大学倒産が話題に?
河合氏は「18歳人口の減少は今に始まった話ではありません」と語る。団塊ジュニア世代が18歳となった1992年の約205万人をピークに、日本の18歳人口は減少の一途をたどっている。文部科学省によると、2008年から2017年は約120万人を横ばいで推移していたが、2018年には118万人、2030年には約100万人まで減少すると予測されている。
大学側も対策を講じてこなかった訳ではない。河合氏によると、最近になって大学倒産がクローズアップされるようになったのには理由があるという。「各大学とも、1992年以降の18歳人口激減に危機感を抱き、学部新設や入試制度改革などさまざまな対策を打ち出しました。とりわけ期待したのが、女子の四年制大学への進学率向上でした。事態打開の鍵を握ると考えたのでしょう」との指摘だ。
ところがこれが、短期大学の四年制大学化をはじめとする新規大学の設立ラッシュを呼び起こした。大学数は1992年の523校から、2012年には783校まで増加。少子化を横目に大学が増え続けたことで、入学者の確保はさらに困難を極めるようになった。ここまで増えたのでは、もはや残された道は、すでに5割強まで伸びた全体の進学率のさらなる向上か、留学生の大規模受け入れしかないだろう。
「縮小する市場に逆行して大学数を増やし続けたのだから、これまで多くの学校が倒産に追い込まれていても不思議ではなかったのです」と河合氏は指摘する。ついに万策尽きた現状が「2018年問題の正体」なのだ。
◆国立大学でも死活問題
これは、何も私立大学だけの問題ではないという。東京大学のような超難関校は別として、ブランド力のある都市部の伝統校でさえ穏やかでない状況だ。とりわけ地方大学は深刻さが増している。入学者の多くを地方出身者が占める傾向にあるため、都市部の大学よりも人口減少の影響を受けやすいのだ。
「国土交通省によれば、三大都市圏を除く地方では17万5000人規模の商圏、生活圏の80%には大学が存在します。これが12万5000人規模になると、その半数には大学がありません。地方大学は、この人口規模の維持が生命線といえるでしょう」(河合氏)。さもなければ、成績優秀な地方学生の受け皿となってきた国立大学でさえ、倒産の危機に瀕することになるだろうと河合氏は予測する。
地方大学の学生確保が難しい理由はもうひとつある。地元に有力企業が少ない上に、人口減少によってその地域の将来性が望めなくなれば、「それならば就職活動も踏まえて、最初から東京の大学に進学しよう」と多くの学生が考えるようになるのも無理はない。
河合氏は「新時代に対応できず、『歴史的な役目』を終えた大学が教育界から"退場"していくのは仕方のないことです」と語る。2018年、日本の諸大学は生き残りをかけた「戦国時代」に突入する。
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