「利上げペース」「トランプ政策」「メンバー交代」、パウエル新議長、3つの課題
FRBの次期議長に就任するパウエル氏は、当面は前任のイエレン氏が敷いた「緩やかな利上げ」路線を継続するとみられる。新体制のもと「調整型」とされるパウエル氏の手腕への期待は高いが、適切な利上げペースの見極めなどの難題も多い。3つの視点からパウエル新体制の課題を検証した。(ワシントン 塩原永久)
■物価の低迷
FRBの目下の課題は物価だ。物価上昇率は目標とする2%を長く下回っている。上向かないインフレ率をイエレン氏は「謎だ」と述べ、リスク要因として警戒した。
FRBは昨年12月、今年の利上げ回数が3回になるとの見通しを公表した。3回は昨年と同じペースだが、米株式相場は主要指数の最高値更新が相次ぎ、景気過熱への警戒感もある。
FRB執行部内では勢いづく景気をにらみ、利上げを急ぐべきだとの声が出ている。一方、「物価が十分に上がる前に金融引き締めを急げば、物価上昇の勢いをそぐ」との懸念もあり、利上げペースをめぐってFRB内は割れている。パウエル氏は就任早々、難しい判断を迫られる。
■経済運営の不透明さ
景気の先行きを読みにくくする要因が、トランプ政権の経済運営だ。昨年末に10年間で1兆5千億ドル(約163兆円)の大型減税を実現。さらに1月30日の一般教書演説では、投資規模1兆5千億ドルのインフラ整備計画が示された。
労働需給が逼(ひっ)迫(ぱく)する中で実力以上の経済成長を目指せば、物価の急上昇など思わぬ結果をもたらす懸念が拭えない。
また連邦政府の債務上限引き上げ問題も影を落とす。議会予算局(CBO)は31日、上限が引き上げられなければ3月前半にも資金が底をつき、債務不履行(デフォルト)となる恐れがあると警告した。金融市場を大きく揺るがすことになるため、パウエル氏には頭の痛い懸念材料だ。
■FRB内の変化
パウエル新体制ではFOMCの投票権を持つメンバーの大幅な入れ替えが見込まれている。イエレン氏は理事も退任し、投票権を持つニューヨーク連銀のダドリー総裁も退任予定だ。そうした中、金融引き締めに前向きな「タカ派」が増える見通しが強まっている。
また、物価動向の低迷を踏まえ、FRBの物価に関する政策目標を変更すべきだとの議論も活発になってきた。現行の「上昇率」に代わって「物価水準」を目標とすべきだとする意見が有力で、FRB執行部にも支持者がいる。パウエル氏は約40年ぶりにエコノミストでない議長となるが、ウォール街出身で実務にたけたパウエル氏の調整力が試される。
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