「陸王」波及効果は10億円超…今年の埼玉経済“戌笑う”か

 
「陸王」で使用されたはんてんのレプリカを埼玉県の上田清司知事(右)に贈る小島染織工業の小島秀之社長=2017年12月25日、埼玉県庁(川上響撮影)

 平成30年の十二支は戌(いぬ)。全国の法人270万社(個人企業、倒産、休廃業・解散企業など除く)のうち、戌年に設立された法人は17万155社。都道府県別では最多が東京都の3万6341社。埼玉県では8225社で、全国第5位となった(東京商工リサーチ調べ)。

 経済3団体のうち経済同友会と日本経済団体連合会が創立されたのは、戌年(昭和21年)。12年後の33年には、日清食品が世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売、日本電波塔(東京タワー)が竣工(しゅんこう)した。戌年には、経済界の礎が築かれ、国民生活の発展につながる出来事が相次いで起きている。

 埼玉の県内戌年設立の法人で、最も設立が古いのは9年1月設立のイナガキ商事(川口市)、次いで同年2月のハス金物店(深谷市)、同年3月の吉田商会(川越市)と続く。業歴の古い順では上位9社までが9年に設立された法人だったが、同年は県庁所在地の旧浦和市(現さいたま市)が市制施行された年でもある。

 一方、売上高(単体)トップは全農の園芸直販部門を母体として平成18年6月に設立されたJA全農青果センター(戸田市)の1618億円。次いで、パワー半導体大手で東証1部上場のサンケン電気(新座市)の1028億円、「レクサス」店も展開するトヨタ車ディーラーの埼玉トヨタ自動車(さいたま市)の729億円の順。

 産業別では、最多はサービス業他の2159社(構成比26%)。以下、建設業1988社(同24%)、製造業1093社(同13%)と続く。最少は農・林・漁・鉱業の60社(同1%未満)だ。

 30年は干支でいうと「戊戌(つちのえいぬ)」。十干の「戊」は「茂」という字に通じ植物の成長が絶頂期という意味があり、株式相場では「戌笑う」という格言もある。

 埼玉の県内経済に目を向けると、県が行田市の老舗足袋メーカーをモデルにしたTVドラマ「陸王」放映期間の経済波及効果が10億円超と推算、31年に控えるラグビーW杯(試合会場に熊谷市)へのインバウンド効果が期待されるなど前向きな話題も聞かれるが、30年度の実質県内総生産の成長率は1.6%と29年度2.0%(見込み)から減少が予測されている(ぶぎん地域経済研究所発表)。

 30年の戌年は、景気拡大の恩恵が大手から中小企業まで波及し、培ってきた技術や信用を背景に事業を拡大できる年となるか。はたまた、株高や景気回復によってバラ色の将来が開かれ、「笑う」ことができる年になるのか。県内の動向に注目していきたい。

(土持功・東京商工リサーチ埼玉支店長)