【マネー講座】《iDeCoに注目》(3)〈市場の動き〉実際の活用事例を紹介

 

 今回は、昨年1月に加入対象者が拡大された後の個人型確定拠出年金(iDeCo)市場全体の動きと実際の活用事例のご紹介です。(三菱UFJ信託銀行 荻谷洋介)

どのような方がiDeCoに加入しているのか 

 制度拡大前は全体で1万人/月に届かなかった新規加入者数が制度拡大後、大きく増加しました。2017年4月には単月で約6万人/月となり、前年同月と比べて約10倍になりました。5月以降はやや落ち着き、現状では3万人/月前後で推移しています。

 20歳以上の方は国民年金の被保険者区分が第1号から第3号に分類されますが、iDeCoに最も多く加入されているのは第2号(会社員や公務員等)の方です。

 会社員の方は、お勤めの会社に企業年金制度が有る方と無い方に分かれますが、無い会社にお勤めの方が、より多く加入されています。やはりご自身で老後資金を準備しなければならない必要性を強くお感じになられるためではないかと思われます。

 17年1月に制度として拡大された対象者は、企業年金制度が有る会社の会社員、公務員等(第2号)と専業主婦(夫)(第3号)ですが、専業主婦(夫)の加入者数は現状1000人/月を若干上回る程度と、他と比べるとあまり多いとは言えません。

 一方、公務員等は対象者拡大を待っていた方が17年4月までに2万人/月前後加入されましたが、その後は全体の動きと同様に一旦落ち着いて、現状8000人/月前後で安定的に推移しています。

 今後は、つみたてNISA(少額投資非課税制度)を含めた税制優遇制度の認知度が一層高まっていくことが期待されるために、加入者は徐々に増加していくと思われます。

実際の活用事例

 それでは、実際の活用事例をあげてみます。

 Aさん(男性40歳)は勤めている会社に企業年金制度が無いこともあり、老後に対して漠然とした不安を抱えていました。

 そんな時、新聞でiDeCoの記事を見て2万円/月程度の掛金なら無理なく始められると思い、給与振込口座のある銀行のホームページで資料請求をしました。ご家族は専業主婦のご夫人(Bさん36歳、収入ゼロ)と、お子さんお1人の3人家族。

 Aさんが家でiDeCoのことをBさんに話すと、「私もやってみようかしら」との反応。Bさんは資産運用に興味がないだろうと思っていただけにAさんは意外に思いました。どうやらAさん以上に「お得情報」に敏感なBさんは、iDeCoが税制上「お得」であることをすでにご存じだったようです。

 Aさんの家庭を例に、iDeCo加入のポイントを見てみましょう。

 ・ポイントその1…「掛金額」

 掛金は法律で上限額が決まっています。

Aさんのように企業年金制度がない会社にお勤めの会社員は年額27万6000円(1カ月あたり2万3000円)ですが、例えば、会社で確定給付年金と確定拠出年金(企業型)制度に入っている会社員は年額14万4000円(1カ月あたり1万2000円)になります。

 加入にあたっては、まずご自身の会社の年金制度を確認しましょう。Bさん(専業主婦)の掛金上限額はAさんと同じ年額27万6000円(1カ月あたり2万3000円)です。

 ・ポイントその2…「所得控除」

 掛金上限額は同じでも、AさんとBさんとでは税軽減効果が異なります。

 本連載の第1回でもご紹介しましたが、確定拠出年金の掛金は所得から控除されますので、その分税負担が軽減されます。

 Aさんの課税所得(収入から一定の控除額を差し引いた金額)が500万円だとすると、毎月2万円(年額24万円)の掛金で税負担は7万2000円少なくなります。仮に、これを20年間継続すると税負担の軽減は合計144万円にもなります。

 所得控除による税負担は運用成果にかかわらず軽減されますので、これだけでも「iDeCoを活用しない手はない」と言えるぐらいのメリットになります。

 一方、Bさん(専業主婦)は控除すべきご自身の所得がないので、税負担の軽減もありません。Bさんの掛金額を夫であるAさんの所得から控除できない点は注意が必要です。

 ・ポイントその3…運用益

 運用益が非課税になるメリットはAさんもBさんも同じです。

例えば、利益が100万円だった場合は、通常は約20万円の税金が引かれますが、iDeCoでは100万円の利益をそのまま受け取ることができます。

つみたてNISAとの比較

 18年1月につみたてNISAの制度が始まりました。最長20年間、毎年40万円まで運用益非課税で運用できるため、iDeCo同様に税制優遇制度として注目されています。

 iDeCoは60歳まで引き出しができませんが、つみたてNISAは引き出しに制約がないという特徴があります。一方、税制面では、つみたてNISAにない所得控除がiDeCoにあることがiDeCoの大きな魅力と言えます。

(※マネー講座は随時更新。次回も「iDeCoに注目」をテーマに掲載します)

【プロフィル】荻谷洋介(おぎたに・ようすけ)

三菱UFJ信託銀行確定拠出年金業務部
受託企画グループ担当課長
2003年より確定拠出年金業務に従事。確定拠出年金の企画・営業・事務管理等を経験し、現在はiDeCoの企画・推進を担当。ファイナンシャル・プランナー(CFP)。

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