AI予算、米中の2割以下 18年度770億円 過去最大も財政面に制約

 

 政府の2018年度予算案に計上された人工知能(AI)関連予算は総額770億4000万円で、研究開発で先行する米国や中国の2割以下にとどまると推計されることが25日までに分かった。前年度比で3割増、過去最大の予算を投じるものの、財政面の制約から劣勢が続く。民間投資の日米格差はさらに大きい。このままでは、今後の暮らしや産業構造を劇的に変えるとの見方もあるAIの開発競争で取り残される恐れがある。

 今国会で審議されている予算案の各省分を内閣府が集計した。安倍政権は「生産性革命」の柱としてAIの活用を推進しており、17年度当初予算の575億5000万円から200億円近く増やした。それでも一般会計総額に対する比率は0.1%にも満たない水準だ。

 集計方法によって変わるため一概に比較できないが、文部科学省の最新の集計では、米国の政府予算額は日本の6倍超の5000億円、中国も5倍超の4500億円に上る。

 同様に文科省が主要企業分を積み上げて算出した民間投資額は、日本が6000億円以上なのに対し、国家予算にウエートを置く中国も同規模の6000億円以上を確保。アマゾン・コムやグーグルを擁する米国は桁違いの7兆円以上に達する。

 日本の18年度政府予算案を省別にみると、経済産業省がロボットの中核技術や、次世代コンピューター向けAIチップの開発などに393億円、厚生労働省が医療データの活用や創薬関連で196億円、文科省が理化学研究所の基礎研究や人材育成などに115億円をそれぞれ計上した。

 全体の集計額とは別に、内閣府は戦略的な研究開発に幅広く充てる予算として計555億円を確保しており、その一部をAI関連に回す方針だ。

 財政状況が厳しい中、限られた財源を強みのある分野に重点投資し、民間資金の呼び水とできるかが今後の鍵を握る。

 経産省の幹部は、米企業が圧倒的な地位を築くインターネット分野での巻き返しは、もはや困難だとし「製造業の生産性向上やヘルスケア分野に活路を見いだす」と日本の戦略を語った。

 ■実力差歴然でも薄い危機感

 三菱総合研究所の比屋根一雄先端技術研究センター長の話 米国と中国はAI投資がめざましく、日本は既にまともに太刀打ちできないほどの実力差がある。非常に厳しい現状だが危機感が薄い。既存産業のぬるま湯に漬かった「ゆでガエル」状態だ。AIは製造業や建設、食品など幅広い産業で導入が進んでいる。日本にも米アマゾン・コムなど海外のIT企業が「黒船」としてやってくるだろう。中国は政府が強力に推進しており、アリババグループや騰訊控股(テンセント)など民間も投資を増やしている。

 日本はヘルスケアや物販などの国内のデータを囲い込み、積極的に活用できる環境を整備する必要がある。日本は米中に比べ質の高い製品やサービスが多い。AIをうまく取り込み、対抗手段を真剣に考えるべきだ。