プーチン氏再選へ 日露関係、望めぬ改善 領土交渉に逆風、変わらぬ中国重視
【モスクワ=遠藤良介】18日のロシア大統領選で当選が確実視されるプーチン氏は、通算4期目に向けて対米強硬姿勢をいっそう強めている。北方領土問題を抱える日本には逆風であり、日露関係に本質的な変化は望めそうにない。ロシアと中国の関係に変化が生じれば日露が接近する可能性もあるが、当面、ロシアの中国重視は変わらないとみられている。
政権派の著名ジャーナリストが監修し、7日に公開されたプーチン氏に関するドキュメンタリー番組「世界秩序2018」。事実上の選挙宣伝だったこの番組には、主要国の現役首脳として唯一、安倍晋三首相のインタビュー映像が織り込まれていた。
「プーチン氏は自らの国をたいへん愛し、強い精神を持っている。私も日本を深く愛している。交渉は時に困難なものだが、共にさまざまな問題を解決していけると確信している」
プーチン政権は2014年のウクライナ危機で米欧の対露制裁を科され、国際的に孤立している。安倍首相のコメントは、プーチン氏に「友人」「理解者」がいるとの好印象を醸し出すのに一役買った。
ただ、ロシアの対外政策の基調は、決して日本に好都合なものでない。
プーチン氏は1日の年次教書演説で、米国に軍事力で対抗していく姿勢を鮮明にした。日本が導入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」も含め、米国が進めるミサイル防衛(MD)網の構築を激しく非難。MDを突破できる最新核兵器の開発に力を注ぐことを宣言した。
「日露関係に本質的な変化を望むべきではない。露指導部には、日本が非自立的なプレーヤーであり、米国の衛星国ですらあるとの考えが根強い」。モスクワ国際関係大のストレリツォフ教授はこう解説する。北方領土をめぐっても、プーチン政権が「第二次大戦の結果としてロシア領になった」とする主張を弱めることは考えにくい。
日露が具体化を急ぐ北方領土の共同経済活動では前進も考えられるが、これがどう領土問題の解決につながるかは不明だ。
ロシアは中国の軍事力増強を警戒しており、最近は極東地域への中国人浸透を不安視させる報道も目立つ。前出のストレリツォフ氏はしかし、「当面、ロシアは中国が日本と比較にならぬ重要なパートナーだと考えるだろう」と語る。ロシアは日本に、「中国への過度の依存」を避けるための「バランサー」の役割を期待しているのが実情だ。
関連記事