米国の輸入制限、日本の見通しに甘さ 対中包囲網、日米欧に軋轢の懸念も
米国の輸入制限で欧州連合(EU)などが暫定的な適用除外となる一方、日本は“落選”となった。日本は製品別での除外に期待するが、思わぬ出遅れは見通しの甘さの表れだ。ただしEUも今後、正式除外に向けた米国との個別交渉に臨まねばならない。もともと鉄鋼などで過剰生産を続ける中国をターゲットにした米国の輸入制限だが、対中包囲網で連携する日米欧に軋轢(あつれき)をもたらしかねない。
「各国で事情が違う」
世耕弘成経済産業相は23日の記者会見で、緊密な日米同盟にもかかわらず国別適用除外から漏れた理由を問われ、こう反論した。
適用除外となった7カ国・地域のうち豪州、アルゼンチン、ブラジルは米国に対する貿易赤字国で、米国が問題視する理由は少ない。またカナダとメキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)、韓国は自由貿易協定(FTA)で米国とそれぞれ再交渉中。適用除外には交渉を優位に進めたい米国の狙いが透ける。
しかし、日本と同様に対米貿易黒字を抱えるEUが国・地域としての適用除外となる一方、製品別除外に期待せざるを得ない日本の出遅れ感は強い。世耕氏は日本からの輸出が製品別の適用除外になることについて「かなり可能性が高い」との立場だが、トランプ米政権の出方は読み切れない。
ただし正式な適用除外に向けた米国との協議を強いられるEUも苦しい立場だ。EUは対米向け鉄鋼輸出が日本に比べて3倍近く多く、輸入制限が域内経済に深刻な悪影響を及ぼしかねないとの危機感は強い。それだけにEUは適用除外を求め、トランプ流の取引に巻き込まれた側面がある。
EUは今後の協議で米国への譲歩を迫られるとも取り沙汰される。交渉が不調に終われば、米国はEUにも関税を発動する構えだ。
一方、ディールに応じない日本からは果実を得られないと判断したトランプ政権は、国別適用除外で日本にゼロ回答を示した。米国で製造できない高品質な鉄鋼製品を米国に輸出している日本には、米国は製品別での除外を認めざるを得ないとの読みもある。日本は製品別でも期待を裏切られれば、世界貿易機関(WTO)への提訴といった対抗措置も排除していない。
トランプ氏の動きはEU、日本双方との間できしみを生んだ。今後も緊張が続けば、日米欧が一致して中国に圧力をかける構図が崩れるリスクもある。(大柳聡庸)
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