台湾、日本統治時代の建造物保存 政府予算での修復も決定

 

 台湾で日本統治時代の歴史的建造物を保存する取り組みが活発化している。2016年発足した民主進歩党(民進党)政権も支援。日本時代も含め、自分たちの歴史を大切にしようとする台湾人アイデンティティーの深まりが背景にある。

 西部・雲林県。郊外の雑木林の中に朽ちた家屋が見える。同県が修復を計画している、旧日本軍官舎だ。「貴重な歴史的建造物を壊したらもったいない」と保存を決めた。同県では既に郡役所など日本時代の施設が保存されている。

 東部の花蓮市には日本式の住宅が立ち並ぶ小路がある。旧日本軍が使用していた官舎で、04年ごろ保存運動が起き、修復された。向かいにある軍幹部住宅は劣化が激しく17年12月、政府予算での修復が決まった。一帯は「将軍府」と呼ばれる観光地だ。

 民進党・蔡英文政権の発足直後、文化部(文化省)は地方の保存活動を支援する「歴史現場再生」プロジェクトを立ち上げた。日本時代だけでなく清朝や戦後の建造物も対象だが、結果的に開発が大きく進んだ日本時代が多い。台湾の全22直轄市・市・県のうち少なくとも12で日本時代の建造物が対象に入る。

 台北市は17年末、日本時代の派出所など17の歴史的建造物の修復事業に民間参入を呼び掛けた。市内には旧台湾総督府(総統府)、旧台北第2高等女学校(立法院=国会)、旧総督官邸(台北賓館)など多くの公共施設も残る。日本の建造物がこれほど保存されているのは、日本を除けば台湾だけといわれる。

 反対の声もあった。日本が引き揚げた後に中国から来た中国国民党政権は「脱日本化」を進めた。00年ごろには台北市内の旧三井物産ビルの保存をめぐり、所有者の銀行が「日本軍国主義の宣伝になる」と反発したが、結局残った。

 台湾の最高学術機関、中央研究院の台湾史研究所の呉叡人副研究員は「台湾化が進む中で、日本時代の記憶は台湾人のアイデンティティーの一部となった」と分析している。(台北 共同)