公示地価 地方の商業地、26年ぶり上昇、格差も広がる

 
北海道のニセコ観光圏では、訪日外国人旅行者などの観光客でにぎわい、別荘地としてだけでなく商業地としての需要も高まっている=3月下旬、北海道倶知安町(提供写真)

 国土交通省が27日に発表した平成30年の公示地価は、地方圏の商業地が26年ぶりに上昇した。札幌や仙台、広島、福岡の中核的な4市は上昇幅が三大都市圏(東京、大阪、名古屋)を上回って拡大。日銀の低金利政策や米国の金利上昇が観光地を中心に投資を呼び込んでいる。一方、観光地の格差も広がり、優勝劣敗が色濃く反映された。

 世界的スキーリゾートとなった北海道・ニセコ。目抜き通りは店舗が並び、オーストラリアやアジアからの観光客が行き交う。「ニセコに別荘」が海外富裕層のステータスとなりつつあり、現地で不動産仲介を展開する東急リゾートは「1億円超の物件が活発に取引されている」と明かす。

 地価上昇率はニセコ観光圏に位置する北海道倶知安(くっちゃん)町が住宅地のトップ3を独占し商業地もトップ。住宅地は北海道や沖縄県、商業地も大阪・道頓堀に京都など訪日外国人旅行者の人気スポットが幅をきかせた。

 人気観光地にはマネーが集まる。投資法人の野村不動産マスターファンドは5日、札幌の中心街に近いホテルを36億円で取得した。今後の収益まで加味した想定利回りは都心オフィスを上回る5.1%。「好立地と高稼働率が強み」。担当幹部は自信を深める。

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 不動産サービス大手ジョーンズラングラサール(JLL)によると、29年の商業用不動産投資額は前年比13%増。日銀の低金利政策を背景に国債以上の利回りを求める投資家が資金を振り向ける。ただ都心のオフィス投資では急激な地価上昇が利回りを減殺する。

 代わって熱視線を注がれるのが地方の観光地だ。JLLの大東雄人アソシエイトディレクターは「投資家は利回りのいいホテルや商業ビルへの投資を増やしている」と分析する。

 米国の金利上昇の流れもこの傾向に拍車をかける。米国では国債と不動産(都心オフィス)の利回り差が2017(平成29)年1~3月から3%を切り、低金利の継続が見込まれる日本市場の“お得感”が強まった。28年に14%だった国内の商業用不動産の海外からの投資比率は、29年に26%に跳ね上がった。

 大東氏は「海外マネー流入は、世界でも名の売れるニセコや京都などには有利に働いた」と解説する。

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 観光地の知名度が地価上昇を牽引する構図は地方間の格差拡大を引き起こす。

 三浦半島(神奈川県)の三浦市は「三崎のマグロ」で知られるが、下落率は住宅地で全国1~3位、商業地も10位だ。京浜急行電鉄の三崎口駅の年間乗降客数は近年1万8千人前後と、訪日客効果から取り残されている。品川-羽田空港間がドル箱路線に成長する京急は三浦半島のてこ入れに着手。タイや台湾などに事務所を構え、三浦半島のPRを加速させる。

 三井住友トラスト基礎研究所の北村邦夫部長は「地価上昇の地方波及を一過性としないためには、地元の主体的努力に加え、海外プロモーションなどで後押しする政府の役割も重要になる」と指摘している。(佐久間修志)