公示地価 郊外型マンション活況 若い家族層誘引
地価や建築費の上昇を受けて首都圏の新築マンション価格が高騰し、市場の牽引役である若いファミリー層の購入が難しくなってきた。こうした中、東京23区内の物件を求めず、交通の利便性が良い郊外エリアのマンションを求める動きが活発化している。「好調な都心部に対し、鈍い郊外」といった潮流に変化の兆しが表れ始めている。(伊藤俊祐)
不動産経済研究所によると、平成29年に東京都区部で発売した新築マンションの平均価格は7089万円で前年比6.9%も上昇。利便性に優れながら割安な価格で購入できるという理由で人気の高い「城東エリア」(東部)、「城北エリア」(北部)の物件も価格が上昇し、消費者は購入しづらくなっている。こうした中、注目されているのが郊外物件だ。
東京都足立区に隣接する埼玉県八潮市で住友不動産が販売している「シティテラス八潮」(総戸数493)は、これまでの来場者のうち荒川区や江戸川区など城東、城北エリアの住民が約6割を占める。「つくばエクスプレスの最寄り駅から秋葉原駅(東京都千代田区)まで最短17分」という近さにもかかわらず、3LDKタイプで2980万円からという割安な価格帯が若いファミリー層をひきつけている。
神奈川県海老名市も新たな激戦区として注目を集める。小田急電鉄の特急ロマンスカーが2年前から海老名駅に停車するようになり、都内への通勤時間が大幅に短縮されたのが理由。3LDKタイプの価格は3700万円台からという「海老名ザ・レジデンス」(同412)など大型物件の開発が相次ぐ。
郊外型マンションの人気が再び高まってきたのを踏まえ、デベロッパー(開発業者)の戦略も変わりつつある。これまでは都心部での購入を断念した層を念頭にやや高めの価格を設定していたが、「この半年で本来の適正価格に合わせる動きが加速している」(業界関係者)と指摘。今後、郊外型を後押しする要因になるとみられる。
ただ、郊外プロジェクトの事業環境がすべて好転する可能性は低い。29年のマンション発売戸数は千葉県が前年比21.1%減と大幅減少したのに対し、埼玉県は1.5%増となった。27年にJR上野東京ラインが開通し、それまで上野駅止まりだった電車が東京駅以南に乗り入れるようになった。交通の利便性が“勝ち組”の必要条件になっているのだ。
国土交通省は地価動向について「都心部へのアクセス性などで個別化が進んでいる」と分析。マンションについても同様の動きがあり、「勝ち組」と「負け組」のエリアが鮮明となりそうだ。