与党協議決着も視界不良のカジノ法案 政権への逆風で譲歩重ねた自民 公明は巻き返し

 
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案に関する与党協議に臨む自民党の岸田文雄政調会長(中央)と公明党の石田祝稔政調会(左)=3日午後、東京・永田町の衆院第二議員会館(撮影・春名中)

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案をめぐる与党協議がなんとか決着したが、公明党が厳しい規制を求めて譲らず、自民党が妥協を重ねる場面が目立った。財務省の決裁文書改竄で安倍晋三政権への世論の逆風が強まる中、カジノ解禁に慎重論の根強い公明党が巻き返しを図った格好だ。自民党からは怨嗟の声も漏れている。

過剰なまでの配慮

 「考え方の違いに大きな距離のあるものもあったが、両党が精力的に調整し合意に至ることができた」

 自民党の岸田文雄政調会長は3日の記者会見でこう胸を張ったが、合意内容は公明党への配慮が過剰なまでにちりばめられた。

 争点として最後まで残った日本人客のカジノ入場料をめぐっては、公明党が世界最高水準の「8千円」をかたくなに主張。自民党は当初案の「2千円」から「5千円以下」、そして「6千円」まで譲歩を余儀なくされた。

 当初案の3倍もの高額となり、集客力の低下は避けられない。設置箇所数でも、自民党は誘致を目指す自治体の期待を背負い「4、5カ所」を求めたが、公明党は絞り込みの徹底を求め、事後の見直し規定はあるものの、制度導入時は「3カ所」に制約された。

 自民党幹部は「とりあえずカジノ解禁を優先して妥協したが、これではビジネスモデルとして成り立たない…」と頭を抱える。

公明まるでひとごと

 そもそも公明党の支持母体の創価学会は「会員の7割がカジノ解禁に反対」(党幹部)というほどアレルギーが強く、山口那津男代表ら党執行部は一貫して慎重な立場をとってきた。

 ただ、今の自民党は衆参両院で単独過半数の勢力がある。いくら連立を組んでいるとはいえ、本来は公明党の主張を丸のみするような環境ではないはずだ。

 政府・自民党は当初、実施法案を3月中に国会提出し、4月以降、衆院内閣委員会で審議を始める青写真を描いていた。だが、3月2日に文書改竄問題が発覚して以降、公明党は与党実務者の協議で「一歩も引かない姿勢を強めた」(自民党関係者)といい、最終合意は4月までずれ込んだ。

 安倍内閣の支持率が急落しており、自民党も強引な政権運営をしているとの印象を国民世論に与えることを避けたかったようだ。

 山口氏は3日の記者会見で、カジノ解禁に反対論が目立つ野党を念頭に「政府・与党は、国会の次の審議に耐えられる実施法案になるよう合意形成を図るべきだ」と強調した。

 公明党幹部は、6月20日に国会会期末が迫ることや、衆院内閣委に他の重要法案が多いことを踏まえ「実施法案の提出が遅くなり、今国会成立は無理だろう」とひとごとのように語る。

「維新と協力」の声も

 実施法案の成立は、大阪へのIR誘致を掲げる日本維新の会の悲願でもある。自民党と日本維新の会は、昨年の衆院選で対立して以降、疎遠となっていた。

 公明党の動きを見た首相周辺からは「維新との協力関係をもう一度温め直したい」との声まで漏れている。