千葉で官民連携、農業担い手確保 参入や支援広がる
農業産出額全国4位の千葉県でも、農業の担い手確保や支援のための官民の動きが広がっている。農家の高齢化により増加する耕作放棄地を解決する狙いや、日本食の海外での普及に伴う輸出増や成長力に期待が集まっているためだ。課題解決と成長産業化に向け、こうした支援策や連携で、農業の経営改善につなげられるかが焦点となりそうだ。(永田岳彦)
「担い手不足の対策に決定打はない。ならば自身で参入して、企業の農業参入の呼び水としたい」。千葉銀行や小湊鉄道、日立製作所など16社が共同出資して3月に設立した農業法人「フレッシュファームちば」の社長に就任した千葉銀の池田等参与は意気込みを語った。銀行による農業参入は、メガバンクでは三井住友銀行、地方銀行では鹿児島銀行や宮崎銀行がすでに行っているが県内では初。
同社は市原市皆吉地区で約2.1ヘクタールの水田を借り受け、同行の行員1人が出向し、地元農家の指導のもと稲作を始める。数年で耕作面積を30~40ヘクタールに拡大し、花きなどの生産も目指す。このほか出資する企業と連携し、ITを活用した生産性の向上や販路の拡大などにも取り組む。
県内ではこのほかにも、三菱地所が農業関連のベンチャー企業と設立した共同出資会社が、千葉市の休耕地を活用した高糖度のミニトマト栽培に乗り出す。
一方、農家の高齢化に対応する新たな担い手確保では、県とJAグループ千葉などが農家の経営改善を目的とした「県農業者総合支援協議会」を設立。4月には専用の相談窓口「県農業総合支援センター」を開設した。
県とJAグループの職員が連携して担い手支援にあたる事例は、全国的にみても珍しいという。県などは「ワンストップで連携して総合的な担い手支援体制を構築したい」としている。平成30年度は500軒の農家を訪ね、個々の農家のニーズにあった支援策の提案を目指す。
県の統計によると、平成2年は約11万7千戸だった農家の数が、27年には約6万3千戸となり、25年間でほぼ半減した。これに伴い、耕作放棄地も約8千ヘクタールから約1万9千ヘクタールまで増加している。県が掲げる「農業産出額全国2位の奪還」に向け、官民のさまざまな取り組みの成果が求められている。
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