米輸入関税、自国中小に逆風 日本製材料入手の先行き心配

 

 米国の製造業保護を目的とするトランプ大統領の政策が逆に国内の中小メーカーを悩ませているケースがある。「輸入制限の適用除外の申請手続きはとても複雑だ。分からない点も多い」。中西部ミズーリ州では、機械部品メーカーの経営者が日本製の材料入手の先行きを心配していた。

 高いハードル

 「しばらくは様子を見ようと思う」

 ミズーリ州ジョプリンで機械部品メーカーを経営する社長のグレッグ・シェリックさん(69)は、申請書類を前に苦り切った表情を浮かべた。小規模事業者が専門家の助けなしに適用除外を申請するハードルは高い。

 トランプ政権は鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す輸入制限を3月23日に発動した。一方で、米国での生産量が少ないなどの特殊な製品は適用外とすることを決め、国内の事業者から申請を受け付けている。

 ただ、申請するには除外を希望する鉄鋼製品の合計重量から、銅や鉛などの含有率まで多岐にわたる内容を細かく書類に記入しなければならない。「従業員が100人強の小さな会社だから顧問弁護士はいないし、法律事務所に相談すれば多額の費用がかかる」。シェリックさんは説明する。

 EUより高品質

 日本も輸入制限の対象になったことが、米国の一部の中小企業を直撃している。山陽特殊製鋼などから輸入した鉄鋼を精密加工し、ベアリング(軸受け)用の部品を作るシェリックさんの会社にとっても死活問題だ。

 事務所に併設した約5000平方メートルの工場には、材料の鉄鋼が無造作に置かれ、多くの従業員が黙々と大型機械を操作し、鉄鋼を加工したり、研磨したりしていた。

 ベアリングは機械が動く際の摩擦を減らし、動作を滑らかにする重要な部品。材料の鉄鋼には高い耐久性や、摩擦の原因となる不純物の少なさが求められる。

 欧州連合(EU)は暫定的に輸入制限の対象外になった。シェリックさんはEUに加盟するスウェーデンからも鉄鋼を輸入しているが、スウェーデン製の輸入を増やすことはためらっている。「日本製の方が品質がさらに高い」のが理由だ。

 日本製が関税対象になっても輸入を続ければ、関税分は販売価格に上乗せせざるを得ない。

 適用外に望み

 シェリックさんが会社を始めたのは約30年前。それから5年後くらいに日本から鉄鋼を輸入し始めた。父の後を継ぐことになっている長男で副社長のジェフさん(41)は「事業環境がどうなるのか心配だ」とこぼす。

 シェリックさんは2016年の大統領選で、自分と同じビジネスマンのトランプ氏に投票した。巨額の貿易赤字を減らして、製造業を再生しようという通商政策には賛成だが「輸入制限だけは反対だ」。日本製が輸入制限の適用外になることに望みをつないでいる。(ジョプリン 共同)