安倍首相の中東歴訪、「非キリスト教、非欧米」強みに重層的な関係強化を狙う

 
中東出発を控え、取材に応じる安倍晋三首相=29日午後、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)

 「中東は日本にとってエネルギーの安定供給の点からも極めて重要な地域だ。経済、安全保障、先端技術などさまざまな分野でも重層的な関係を強化をしていかなければならない」

 安倍晋三首相は29日、官邸で記者団に今回の中東歴訪の意義を強調した。「日本ならではの支援をし、良好な関係をそれぞれ築いてきている」とも語った。首相は「非キリスト教、非欧米国家」という日本の強みを生かし、中東和平の進展に向けても積極的に関与していく考えだ。

 地域への関心示す

 今回の歴訪のハイライトは、首相が5月1日夕(日本時間2日未明)から訪問するイスラエル、パレスチナになる。首相は、トランプ米大統領がイスラエルの首都をエルサレムと認定した後、この地域を訪問する最初の主要国の首脳となる。外務省幹部は「今回の訪問は中東に日本が高い関心を持っていることを世界に示す象徴だ。日本は米国、イスラエル、パレスチナの橋渡し役となる」と、訪問の意義を説明する。

 「橋渡し」の具体例となるのが、首相が2日に訪問するヨルダン川西岸・エリコに設置された「エリコ農産加工団地(JAIP)」だ。平成18(2006)年に打ち出した日本独自のイニシアチブ「平和と繁栄の回廊」構想の中核事業で、日本、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの4者の地域協力によって、パレスチナの経済的自立を促す中長期的な取り組みとしてスタート。すでにオリーブ石鹸の工場などが稼働している。

 また、アラブ首長国連邦(UAE)は石油の輸出に依存しない「脱石油」を目指しており、教育や宇宙開発分野でも日本との連携に期待が高まっている。今回の訪問には日本企業の経済ミッションも同行し、首相のトップセールスで経済関係の強化を図る。首相は経済フォーラムに出席するほか、日UAEの投資協定に関する文書に署名する。

 アジアの安保直結

 一方、中東情勢の不安定化は、米国の関心を中東に向かわせ、アジアへの関与の低下につながってきた。最近はシリア情勢にも絡んでシーア派大国イランと、イスラエルやイスラム教スンニ派のサウジアラビアなどの対立も不穏さを増すばかりだ。

 日本の中東での外交力の限界を指摘する声は少なくない。首相は長期政権で培った外交力を生かして、今回の訪問で中東地域の安定に貢献する強い決意を示す考えだ。

(沢田大典、小川真由美)