【マネー講座】《「もらう」相続》(1)〈相続人と対象財産〉誰から何をもらえるか
いま、「終活」など自分の相続対策について考える人が増えています。しかし、実際に相続対策を必要とするのは「財産を遺す人」ではなく「財産を受け取る人」です。転ばぬ先の杖、と言います。いざという時に困らないように確認しておきましょう。なお、相続に関する制度は国によって異なります。この連載では日本国籍を有する人が亡くなった時の相続について、2018年4月時点の法令等に基づき説明します。(りそな銀行 折原和仁)
「相続」というと、何を連想しますか?
親から財産をもらえる、手続が大変そう、あるいは「終活」でしょうか。真っ先に相続税を考えたという人がいるかもしれません。あるいは、「ウチには財産なんかないから関係ないよ」、という人もいるでしょう。
相続とは、人の死によって、亡くなった人(「被相続人」と言います)の有していた一切の権利・義務が、「相続人」と呼ばれる一定の親族に包括的に承継されることです。相応の年数を生きて社会生活をしてきた人であれば、多かれ少なかれ何らかの財産(財産には借金も含まれます!)を遺しますから、相続はほぼすべての人に関係することです。
「相続人」が権利・義務を承継する
誰が相続人になるのかは、民法で次のように定められています。
まず、被相続人に配偶者(法律上の婚姻関係にある夫または妻)がいる場合は、配偶者は相続人になります。その上で、次に示す被相続人の親族が配偶者と共に相続人(「血族相続人」といいます)になります。いずれも記載した続柄は、被相続人から見てのものです。
・第1順位…子。
・第2順位…直系尊属(両親(養父母を含む)、祖父母などのう ち一番親等の近い人。第1順位相続人がいない場合)。
・第3順位…兄弟姉妹(第1順位、第2順位相続人が共にいない場合)。
各相続人が承継する被相続人の財産(遺産)の割合(「法定相続分」といいます)は次のとおりです。
・配偶者と子が相続人となる場合…配偶者1/2、子1/2
・配偶者と直系尊属が相続人となる場合…配偶者2/3、直系尊属1/3
・配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合…配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
同順位の相続人が複数いる場合は、法定相続分は原則として均等に分割します。ただし、第3順位相続人である兄弟姉妹の中で(1)父母を同じくする兄弟姉妹と、(2)父母のいずれかが異なる兄弟姉妹とがいる場合は、父母のいずれかが異なる兄弟姉妹の法定相続分は、父母を同じくする兄弟姉妹の2分の1とされています。
相続人が先に死んでいたら?…代襲相続
子が、その子(すなわち孫)を残して被相続人よりも先に死亡した場合、亡くなった子の権利(相続人としての地位)は孫が承継します。これを「代襲相続」と言います。
同様に、代襲相続人となった孫がその子(すなわち曾孫=ひまご)を残して被相続人より先に死亡した場合は、亡くなった孫の権利は曾孫が承継します。これを「再代襲」と言います。
兄弟姉妹がその子(すなわち甥姪)を残して被相続人より先に死亡した場合は、亡くなった兄弟姉妹の権利は甥姪が承継します。
ただし、代襲相続人となった甥姪が子(姪孫=てっそん=と言います)を残して死亡した場合は、孫の場合とは異なり、姪孫への再代襲はありません。
配偶者がなく、またこれら第1順位から第3順位までの相続人(代襲相続人等を含む)が全くいない場合は「相続人不存在」になります。その場合、被相続人の遺産は所定の手続きを経たうえで国庫に帰属します。
あなたは誰から相続を受けられますか?
以上は被相続人を中心にした説明です。では、相続人(たとえば、あなた)から見ると、あなたは誰の遺産を相続できるのでしょうか。
まず、あなたが結婚しているなら、配偶者から相続を受ける可能性があります。
次に考えられるのは両親(養父母を含む)です。両親は亡くなっているが祖父母が健在である、という時は、祖父母から相続を受ける可能性があります。
あなたの子どもが孫を残さずに死亡した時は子どもから、さらに、子どものいない兄弟姉妹やおじ・おばが死亡し、その時点であなたの両親が既に死亡している場合は、兄弟姉妹やおじ・おばからも相続を受ける可能性があります。
その他、被相続人があなたに財産を遺贈(遺言で贈与することです)する内容の遺言を遺していたなら、あなたは被相続人との続柄にかかわらず、遺言に基づき遺産を受けることができます。
相続される財産…借金なども含まれる
次は、どのような財産が相続されるのかについてみていきます。
被相続人の財産の中には、相続人に相続される財産(遺産)と相続されない財産(一代限りで無くなるもの)があります。具体的には表に示した通りです。
遺産は、被相続人の相続開始により、法定相続分を持分とした相続人の共有財産になります。
遺産には、債務などのマイナスの財産も含まれます。一般的な資産は相続人全員による話し合い(「遺産分割協議」と言います)で、具体的に誰がどの財産を相続するのかを定めますが、債務や各種の権利・義務については原則として法定相続割合により全相続人が等しく取得し、または負担するものとされます。
また祭祀財産は、相続人にではなく慣習などにより定められる「祭祀の主宰者」に一括して承継されます。
被相続人の相続開始により支払われる死亡保険金や死亡退職金は、保険契約や退職金規定などに基づいて定められた受取人に対して、相続とは別に支払われるものですから、遺産ではありません(ただし、相続税の課税対象にはなります)。このため、遺産分割協議を経ないで受け取ることができます。
遺産の中には、相続を受けたくないものも含まれます。代表的なものは債務だと思いますが、それ以外にもいろいろあります。次回は、そのようなときにはどうしたらよいか見ていきましょう。
(※マネー講座は随時更新。次回も「『もらう』相続」をテーマに掲載します)
【プロフィル】折原和仁(おりはら・かずひと)
アドバイザー
1961年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1983年、りそな銀行に入社。ロンドン、ニューヨーク勤務などを経て、2003年から遺言信託業務に就く。2007年から全店の遺言信託案件を審査する最終責任者として現在に至る。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(CFP)、日本証券アナリスト協会検定委員(CIIA)。著書に『円満相続への道』(主婦の友社)。
関連記事