ICTで農業進化 中野のブドウ農家が導入、数値「見える化」で効率アップ 長野

 
中野市のブドウ農家が導入した「農業IoT」。カメラは360度動くようになっている

 情報通信技術(ICT)を農業に導入する動きが本格化してきている。長野県中野市のブドウ農家は4月から、農業ハウスの温度や湿度などがスマートフォンで瞬時に確認できるシステムを導入した。経験と勘を頼りに農作物を育ててきたこれまでの農作業を改め、数値を「見える化」することで、作業の効率化を図る狙いがある。農業の担い手不足が深刻化する中、後継者の育成につながるとも期待される。県など農業関係者は、生産性をさらに向上させるため、同様のシステムの活用を検討している。(久保まりな)

 ■「身体が楽に」

 中野市のブドウ農家が取り入れたICTは、農業ハウスに無線LAN「Wi-Fi」を敷き、温度や湿度のほか、日射量、土壌水分量を測るセンサーを設置。センサーで得られたデータをスマートフォンで見られる仕組みだ。NTT東日本が開発した「お手軽なIoTパッケージサービス(農業IoT)」を導入したという。

 360度見渡せるカメラで、農作物の状況を動画で確認できる上、温度などが一定の数値を超えるとアラームが鳴るといい、わざわざハウスに出向き、農作物の生育状況をチェックする必要もない。カメラは、人の動きを自動追尾するため、盗難防止にも役立つ。

 導入したブドウ農家は「ハウスの状況をいつでも、どこでも把握できるようになった。夜も安心して寝られる。身体も楽になった」と話す。

 「新規就農者や若い人の指導にも効果的です」

 JA中野市営農部の山田達也さんは、ICTの導入には担い手を育てる効果もあると指摘する。大半の農家はこれまで、経験や勘を頼りに農作物を育ててきた。だが、温度などのデータが「見える化」されれば、的確な指導が可能になるという。

 JA中野市も、ブドウ農家のデータを見られるようにしており、農作業のノウハウを蓄積し、若手農業者の指導に活用する考えだ。今後、県内で新規就農を目指す人らに同システムの紹介もしていく。

 ■担い手不足背景

 ICTの導入が進む背景には、耕作放棄地の増加や農業の担い手不足が深刻化している事情がある。国がICTなどを活用した「スマート農業」を推進するのも、そのためだ。

 長野も同様の問題を抱えており、県農業技術課は「耕作放棄地が増えていく一方、農業の担い手は減少している。省力的な農業の実現が求められている」と強調する。このため、県内でもICTなどの最先端技術を取り入れる動きが広がっている。

 実際、県は昨年5月から、トヨタ自動車と連携し、農業の効率化支援に乗り出した。

 自動車生産の効率化を極限まで高めた「トヨタ式カイゼン(改善)」の手法を松本、安曇野両市の2農業法人で実施。稲作を対象に、水田面積や作業実績などのデータを「見える化」し、農作業の「カイゼン」につなげている。

 今後、他の農作物でも活用することを検討しており、農業の生産性向上に向けたICT導入の動きは、さらに加速しそうだ。