【専欄】「熊孩子」は中国を壊す? 子供たちの悪行にうんざり、一人っ子第一世代の親に問題

 
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 最近、中国のテレビやネットを見ていると、頻繁に遭遇する言葉に「熊孩子(ションハイズ)」がある。直訳すると「熊のような子供」だが、われわれが想像する「くまのプーさん」「ダッフィー」「くまモン」などの愛されキャラとは程遠い。いたずらっ子、わんぱく小僧、ひいては悪魔のような子供、などの意味だ。

 熊孩子関連で、繰り返し閲覧されている動画がある。四川省のバス内で、5、6歳くらいの男の子が、乗り合わせた若者を何度も足で蹴り飛ばしている。若者はしばらく無視していたが、あまりのしつこさに、ついにキレた。男の子を床に引き倒し、頭を踏みつけにしたのである。子供相手にそこまでしなくても…と思うが、動画を見た人たちは、子供よりも若者に共感した。あちこちで繰り広げられる熊孩子の悪行に、人々がうんざりしている証拠だろう。

 身体が震えたのが、浙江省での事件である。浙江大学病院に、14歳の男の子が、臀部に鉛筆が15センチも突き刺さった状態で、緊急搬送された。同級生の熊孩子が、ふざけて突き刺したのだそうだ。

 ある地方の公園。某男性は、妊娠5、6カ月の妻と夕方近所の公園を散歩していた。すると、バスケットボールに興じていた男の子が走ってきて、妻の大きなおなかめがけて、ボールを投げつけてきたという。妻はとっさにおなかをかばったが、反動で転んでしまった。すぐさま病院に駆け込んだが、幸いなことにおなかの子供は無事だったという。

 熊孩子の台頭には、親たちにも問題がある。親たちは一人っ子政策第一世代が多い。

 某映画館の化粧室でのこと。やはり5、6歳ほどの女の子が洗面台に設置されているハンドソープを、床にまき散らしていた。それを見た母親は、もちろん叱った。しかしその叱り方は想定外である。

 「そんなことして、自分が滑って転んだらどうするの!」

 女の子は笑いながら、つるつるになった床で遊んでいたが、案の定滑って転び、大泣きした。

 一人っ子第一世代が小学校に上がるころ、これまで見たことのないふるまいをする子供たちを見て、大人たちはみんな憂えた。「この子たちが成長したら、どんな大人になるのだろう」

 時は過ぎ、彼らは子の親となった。中国の親たちは忙しい。なかには両親ともに出稼ぎに出ていて、何年も子供に接してない親もいる。21世紀の大国を担う子供たちが、熊孩子のまま成長するのは、何としても避けたいものである。(ノンフィクション作家・青樹明子)