日本、多国間協定の発効急ぐ 米国に自由貿易の重要性訴え、トランプ氏に保護主義転換促す
先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)は9日、世界貿易機関(WTO)の機能強化などをうたった首脳宣言を採択して閉幕した。ただ、通商問題では保護主義的な姿勢を強める米国と他の6カ国との溝は完全には埋まらなかった。日本は欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などの発効を急ぎ、米国に自由貿易の重要性を訴える。
「WTOには是正や強化する面はあるが、多角的貿易体制は重要だ」。安倍晋三首相はサミットの討議の中でこう強調した。
WTOは国有企業の投資や知的財産保護など、比較的新しい問題についてルールが十分に整備されていない。このため、トランプ米大統領はWTO体制では中国の不公正な貿易を阻止できないと不満を募らせている。紛争処理に何年もかかるといった課題もある。
他の6カ国もトランプ氏が批判的なWTOの機能強化では一致。だが、同盟国にも高関税を課す輸入制限を発動し、2国間交渉で譲歩を迫るトランプ米政権のやり方には反発が強まった。
安倍首相はサミットの討議で「TPPやEPAで関係を築き、経済成長につなげる」と主張した。TPPやEPAは関税だけでなく投資や知的財産保護などで高水準のルールを盛り込み、不公正な貿易を続ける中国への牽制(けんせい)にもなる。
米国が脱退したTPP11、日欧EPAは来年の発効を見込む。日本と中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は7月に東京で初めて閣僚会合を開催し交渉を加速させる。
日本は米国にTPP復帰を求めるが、トランプ氏は多国間協定と距離を置く。だが、米国が取り残されれば、関税を課せられる米国製品が各国の市場で不利になる。このため政府関係者は「TPPや日欧EPAを早期に発効できれば、トランプ氏に翻意を促す材料になる」と期待感を示す。(大柳聡庸)
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