TPP11、大きな経済効果 自動車輸出にプラス 輸入食品は安く
米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)の議論を主導してきた日本が国内手続きをほぼ終えたことで、発効に向けた機運が一気に高まりそうだ。TPP11は年内にも発効される見通しで、貿易・投資の拡大によりGDPが押し上げられ、大きな経済効果が見込まれる。その恩恵は、企業活動や暮らしのさまざまな範囲に及びそうだ。
TPP11は工業製品の関税撤廃・引き下げ、投資、知的財産権保護、電子商取引など幅広い分野のルールを定めている。日本企業にとっては輸出や海外事業展開を拡大する上での追い風となることが期待される。
日本の代表的な輸出品である自動車は、カナダの関税(現在6・1%)が協定発効から5年目に撤廃される。ベトナムは現在、大型車に70%の高関税を設定しているが10年目にはゼロになる。自動車メーカーが域内で部品を調達すれば、生産コストの削減にもなる。
流通などサービス分野が受けるメリットも大きい。ベトナムでは協定発効から5年後に、スーパーやコンビニエンスストアの出店に関する細かい規制が廃止される。マレーシアでも、コンビニへの外資規制が緩和される。
日常生活で恩恵を実感しやすいのは、輸入食品・農林水産品の値下がりだ。日本に輸入される牛肉の関税率は38・5%だが、16年目に9%に下がる。カナダやニュージーランド産の値下げが期待される。プロセスチーズは現行の関税率40%を維持するが、オーストラリアとニュージーランド産に11年目には各150トンの無関税枠を設ける。
一方、日本の農業にとって最重要品目のコメは現行の高関税を維持した上で、オーストラリアに無関税枠を導入する。
TPP11の発効が近づいたことに経済界からは歓迎の声が上がる。日本商工会議所の三村明夫会頭は29日、「タイ、インドネシア、韓国など協定に関心を示している国々への参加を促すことで、自由貿易圏がさらに拡大していくことを強く望む」とのコメントを発表した。自由貿易体制の強化に向けた「仲間」を増やすことで、日本企業にとってもサプライチェーン(供給網)の強化が期待できるからだ。
日本貿易会の中村邦晴会長は世界的な保護主義の台頭を念頭に「新たに巨大な自由貿易圏が誕生することは世界経済の健全な発展に資する」と期待した。(米沢文)
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