原油高騰、暮らしにも影響 米政権がイラン産輸入停止の「踏み絵」

 
国際石油開発帝石が参入を目指したイランのアザデガン油田=2010年9月(シャナ通信提供・共同)

 トランプ米政権が各国にイラン産原油の輸入停止を突き付けた。テロ支援国家と名指ししたイランの資金源を断つためのいわば「踏み絵」。供給量が減るとの思惑から原油は高騰。夏のレジャー期を前にガソリンも高値の続く公算が大きく、暮らしに影響が広がるのは避けられそうにない。

 市場は即座に反応

 「中国にもインドにも輸入ゼロを求める。例外は認めない」。米国務省高官は6月26日の電話会見で、欧州や日本だけでなく、イラン原油の主要輸入国である中国、インドに一斉に通告した。「多くの国はイランを脅威と見ており、米国のやり方を支持している」「同調しない両国の企業は制裁の対象になる」と強い姿勢を崩さないまま。世界の原油供給量からイラン産が抜け落ちる影響を意に介さなかった。

 市場は即座に反応。ニューヨーク原油先物市場は1バレル=70ドルの節目を一時突破し、約1カ月ぶりの高値をつけた。石油輸出国機構(OPEC)は米国がイラン原油禁輸を要求する前のタイミングに増産で合意。原油価格の高騰は一服するかとみられたが、さらに上昇する可能性は否定できない。

 実際、今月3日のニューヨーク原油先物相場は、イラン産原油の供給減への懸念に加え、リビアの国営石油会社が2カ所の港で原油の積み出しをできなくなったと伝わったことが材料視されて一時、指標の米国産標準油種(WTI)の8月渡しが1バレル=75.27ドルと2014年11月以来、約3年7カ月ぶりの高値水準をつけた。

 みずほ証券の津賀田真紀子シニアコモディティアナリストは「OPEC加盟国の生産能力はそれほど余裕がない」と指摘する。2014年以降の原油価格低迷を受け産油国の設備投資が鈍った影響から増産余地は限られるとの見方だ。

 石油元売り会社幹部も「原油価格は上昇傾向が続く可能性が高い」と予測する。投機マネーが混乱に乗じ原油相場に流入する展開が考えられるためだ。

 原油価格と連動して液化天然ガス(LNG)が値上がりすれば、電気やガス料金もじわりと上昇する恐れがある。

 日本政府は従う立場

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本の原油輸入量のうちイラン産は約5%。「いきなり供給不安になってパニックが起きることは考えにくい」(担当者)というものの、市場は不透明感を増している。

 イランの原油輸出は、かつての核兵器開発疑惑に伴う制裁下の日量約100万バレルから200万バレル超に急回復した。米国の今回の措置は、イランにとって経済再建の生命線を絶たれることを意味し大打撃となる。

 イランは今後、欧州や中国、ロシアに働き掛け原油輸出ルートを死守するとみられる。歴史的に良好な関係にある日本にも配慮を求めてきそうだが、政府幹部は「米国はきわめて強硬だ」と悩ましげだ。

 安倍政権は拉致問題解決や北朝鮮の非核化で米国との緊密な協力関係を維持する必要がある。

 イランに恩を売れば原油の安定供給やイラン国内のビジネスで見返りを期待できるが「核が絡む以上、どちらにもいい顔というわけにはいかない」と米国に従う立場だ。

 中東最大級のアザデガン油田開発への参入を検討してきた国際石油開発帝石は米国のイラン核合意離脱を受けて、実現が困難になったと表明。大手商社関係者は「事態を注視する」と話すが、企業の進出意欲は急速に冷めつつある。