米産業界に根強いTPP待望論 輸出競争の出遅れ懸念  

 

 【ワシントン=塩原永久】TPPから離脱したトランプ米政権に対し、米国内の農業団体や産業界には輸出競争での出遅れを懸念し、復帰を求める声が根強い。トランプ政権は依然として多国間協定に背を向けるが、産業界のTPP待望論が「内圧」となって政権に方針転換を迫っている。

 「米国の農業が世界のリーダーであり続けるには、TPPのような自由で公平な貿易協定が必要だ」

 米最大の農業団体「全米農業連盟」のデュバル会長は18日、貿易摩擦の拡大に懸念を示す声明でこう指摘した。連盟はTPPが農家の年44億ドルの所得増につながると試算。農家や畜産業者は、TPPに加わるオーストラリアなどとの競争で不利になると恐れる。

 ハイテク業界に近いシンクタンク「情報技術イノベーション財団」のアトキンソン会長も、11日の議会証言で、高い基準を設定したTPPが、中国の不公正取引に対抗する「長期的な選択肢になる」と述べた。

 貿易対立による不透明な事業環境を嫌い、企業が投資に及び腰になる副作用も顕在化しつつある。米紙ウォールストリート・ジャーナルは18日の社説で「(TPP離脱が)耐え難い痛みだとわかれば、米国は再加入すると安倍晋三首相は計算している」と指摘した。

 ただ、トランプ米大統領は11月の中間選挙を視野に労働者層に支持を訴える強硬策に傾いており、政権内でTPP復帰に向けた議論が浮上するとしても「中間選挙後になる」(通商専門家)との見方が大勢だ。