【専欄】トルファンは雨だった 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 

 中国・西域の旅を終えて、6月下旬に北京に戻り、「トルファンで雨に降られた」と中国の知人に話したところ、「トルファンでも雨が降るのか」と驚いていた。

 トルファン(新疆ウイグル自治区)はウルムチ(同)の南東約180キロにあり、車で約3時間。高速道路の両側には風力発電の風車が並んでいた。

 トルファンに着いた日、雨がパラパラと落ちてきた。翌朝はもっとしっかりと雨が降った。旅のガイドブックには、トルファンの年間降水量は16ミリとある。トルファンの雨はとても珍しいのだ。

 観光に出かけるころには雨もあがり、青空が広がった。西遊記にも登場する火焔(かえん)山の山中にある仏教石窟「ベゼクリク千仏洞」を参観した。むろん、ここでも人と物のチェック。参観料は40元(約660円)。子供や高齢者への優遇はあるが、対象は中国人だけで、外国人に優遇はない。

 実はちょうど35年前、改革開放が始まって間もない1983年に、この千仏洞を訪れたことがある。何のチェックもない。鍵のかかった石窟を勝手に隙間からのぞき込んでいると、鍵束を持ったウイグル族の少年が現れた。参観料の0.15元を支払うと、石窟の一部を見せてくれた。参観料は35年間で267倍に値上がりした計算になる。今年は改革開放40年という節目の年だが、遺跡にとっての改革開放とは、保護と管理の強化、参観客の増加、参観料の大幅アップといえよう。

 この千仏洞でも「団結は福、分裂は禍」と書かれた小さな看板を目にしたが、ウイグル族をはじめ、いわゆる少数民族が多数生活している新疆ウイグル自治区のウルムチやトルファンでは、各民族の団結を呼びかけた標語を記した看板が目についた。

 「民族の団結は発展・進歩の基盤」「習近平総書記と新疆の各民族は心と心がつながっている」「各民族の偉大な祖国、中華民族、中国共産党に対する一体感を絶えず強めよう」「火焔山の熱さも民族団結の熱さにはかなわない」など、いろいろあった。

 「新時代」と「社会主義核心価値観」に関する宣伝はどこでも見られたが、敦煌(甘粛省)はトルファンなどとは民族事情も異なり、民族間の団結を強調する標語に代わって、「初心を忘れない」「使命を銘記する」といった「習近平語録」が目立った。標語の違いは地域事情を反映しているといえよう。