【現場の風】米中貿易摩擦は日本経済にリスク

 

 □内閣府経済社会総合研究所課長補佐・高山直樹さん(37)

 --米国と中国の貿易摩擦が激しくなっている。日本経済に影響は

 「景気の緩やかな回復は変わらず、いま国内総生産(GDP)に影響が出ているわけではない。ただ、(悪影響が今後及べば)輸出入や、企業の国内での設備投資の判断に変化が出るかもしれない」

 --トランプ米大統領は通商政策に自信を持っているように見える

 「米国の株価と雇用が好調だからだ。どこまでトランプ効果か分からないが、実体経済はすごく強い。ただ、経済学者は『自由貿易がベター(より良い)』と考えている。その原理に逆らい、通商面の衝突が激しくなれば、世界経済が不安定化するかもしれないという懸念は出ている」

 --日本の2018年1~3月期GDPは、9四半期ぶりのマイナス成長になった

 「スマートフォンや自動車が良くなく、確かに個人消費がマイナスになった。ただ、回復のトレンドが変わったようには見えない。(毎月の消費関係の指標も)傾向は変わらない。加えて、雇用が相変わらず良い。失業率は本当に低いし、新卒採用も活発だ。そんな中で、通商問題がリスクとなっている」

 --GDP作成を担当している。日ごろ心掛けていることは

 「いろいろな視点からチェックし、統計の中立性を保つことだ。例えばGDPの推計手法を見直すとき、どういうデータが信頼性があって使えるのかなどを考えなければならない。統計を良く見せたい人たちは確かにいるが、こういう人たちとは一線を画す必要がある。さもなければ(GDPなどの統計は)後世の検証に耐えることはできない」

【プロフィル】高山直樹

 たかやま・なおき 東大教養学部卒、同経済学研究科修士課程修了。経済学博士。2006年内閣府に入府、経済財政運営担当、計量分析室などを経て16年から現職。神奈川県出身。