出版社団体、軽減税率めぐり政府と対立 有害図書を除く書籍に適用要望、財務省は不快感隠さず
消費税率引き上げが来年10月に迫る中、有害図書を除く書籍や雑誌に対し税率を低く抑える「軽減税率」の適用を求める出版社団体と、適用に慎重な政府が対立していることが17日、分かった。団体は軽減税率が適用される新聞同様、書籍や雑誌も「知識を得るため負担を減らすべき対象だ」と訴える。一方、政府は「納得できる有害図書排除の仕組みができていない」と主張。両者の溝が埋まる気配はない。
年末の税制改正視野
出版社団体が本格的に動き出したのは6月中旬。超党派の国会議員でつくる「活字文化議員連盟」と「子どもの未来を考える議員連盟」が東京都内で合同総会を開き、書籍や雑誌に対し軽減税率を適用するよう求める活動方針を採択した。方針案をまとめたのが、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の4団体だ。
2016年度の税制改正大綱では、書籍や雑誌の軽減税率について「有害図書排除の仕組みの構築状況などを勘案し、引き続き検討する」と提言。団体はこれを受け、民間の管理団体が有害図書を区分する仕組みを総会で提案した。
具体的には、法曹や教育関係者などによる第三者委員会を立ち上げ、有害図書の基準を作成。軽減税率の適用対象は「出版倫理コード」を付与し、4団体で構成する機構がコードを管理する。
各出版社は基準に照らして自主的に倫理コードを付与して出版。出版後に有害図書の疑いがある書籍が見つかれば第三者委の審議にかけ、有害図書と判断されると標準税率に戻す仕組みだ。
団体は年末の19年度税制改正を視野に、既に与党税制調査会の幹部に方針案を説明にまわるロビー活動を強化。団体の担当者は「おおむね反応は好意的だ」と手応えを強調する。
だが、この動きに財務省は不快感を隠さない。税制を立案する主税局の幹部は「憲法の租税法律主義で税率は法律で定めている。民間団体が書籍ごとに税率区分を決めるのは事実上の違法行為だ」と忠告する。
民間の判断尊重を
団体側も黙ってはいない。日本オリンピック委員会(JOC)が五輪メダリストなどに贈る報奨金は所得税が非課税になることを例示し、「非課税対象を民間団体(のJOC)が選ぶことが認められるのであれば、民間(の出版社団体)が書籍の税率区分を判断するのも問題ない」と反論する。
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軽減税率と標準税率の対象品目の線引き例
≪軽減税率8%≫
・生鮮食品、加工食品(食用肉や魚、菓子など)
・飲料(ミネラルウオーター、ジュース、みりん風調味料)
・持ち帰り可能な弁当など、出前や宅配
・定期購読の新聞(週2回以上発行)
≪標準税率10%≫
・家畜用の牛豚、観賞魚、ペットフード、種子
・水道水、酒類(ビールなど)、医薬品、医薬部外品
・飲食店などでの店内飲食や出張料理
・電子版の新聞、駅売りの新聞
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【用語解説】書籍・雑誌の軽減税率
日本の消費税に当たる付加価値税を導入している欧州各国では、書籍や雑誌、新聞に軽減税率が適用されている。一方で、性や暴力の過激な描写のある有害図書に標準税率を課す国もある。フランスは標準税率20%に対し書籍は5.5%だが、有害図書には標準税率を適用。イタリア(標準税率22%)は過激な性描写のある作品と政府が判断したものには25%の“ポルノ税”を課している。
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