【高論卓説】外国人労働者の受け入れ拡大の現状、魅力ある制度へ「共生の視点」が必要
少子高齢化が進む上に働き手が減っている。わが国の総人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じている。15年の総人口は1億2709万人だったが、生産年齢人口(15~64歳)は7629万人と、ピークだった1995年の8716万人に比べ1000万人以上も減少している。業種によっては人手不足もかなり深刻な事態で、建設、介護、農業、宿泊、造船の5分野で特に深刻といわれている。(旭リサーチセンター、遼寧中旭智業研究員・森山博之)
人手不足を背景に、政府も新たな在留資格を設けて、外国人労働者の受け入れ拡大へかじを切る方針を決めたようだ。新たに設ける就労資格は、在留期間の上限を5年とした。家族の帯同は基本的に認めないが、より高い専門性を有すると認められた場合、専門的・技術的分野における在留資格への移行を認める。在留期間の上限を設けず、家族帯同を認めるなどの措置も検討するというものだ。
移民に関する法的定義というものは特にないようだが、国連によると「定住国を変更した人々を国際移民とみなし、3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼ぶ」としている。
経済協力開発機構(OECD)が毎年集計している外国人移住者のデータでは、17年の海外から日本への移住者(90日以上滞在予定)数は43万人(前年比9.2%増)で世界第4位。ちなみに1位はドイツで172万人、2位が米国118万人、3位は英国45万人で、5位が韓国の40万人となっている。1年間の移住者の数では、既に日本は世界のトップグループといえる。
一方、国連の世界移住報告書によると、高所得国の人口に占める海外からの移住者の占める比率の平均は14.1%でドイツ14.8%、米国15.3%、英国13.4%、日本1.8%、韓国2.3%となっている。
欧米の先進国と比べると在留移住者の人口比では、日本はまだまだ途上国といえそうだ。この数字は15年ベースのもので、17年末の在留外国人数は256万人なので2.0%に上昇している。
在留外国人256万人を国別でみると、最も多いのが中国の73万人で29%を占める。外国人労働者数は128万人で、留学生の資格外活動(アルバイトなど)が26万人、技能実習生は26万人などとなっている。
技能実習生はベトナムが10万人で1位、中国は8万人で2位だ。技能実習生も以前は中国が1位だったが、ベトナムが急伸し逆転している。一方、留学生に関しては17年に31万人に達しており、08年に設定した「留学生30万人計画」は達成済みだ。最も多いのが、中国の12万人(前年比7.8%増)で留学生全体の4割を占める。
在留外国人の数は、年々増加しつつあるが、警察庁による人口1000人当たりの刑法犯認知件数でみると、02年の22.4件をピークに13年には戦後最少の10.3件となり、17年には7.2件にまで下がっている。治安の面では、在留外国人の増加はほとんど影響ないようだ。
近年、欧州をはじめ労働力として移民を受け入れてきた国々では、規制の動きが出ている。日本も深刻な労働力不足を補うには外国人労働者の受け入れは必要だが、単なる労働力ではなく、同じ人間としていかに共生していくかという視点も制度には必要であろう。魅力ある制度でなければ、人口減少、少子高齢化の進む先進国ニッポンに、わざわざ海を越えてやって来てくれないかもしれない。
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【プロフィル】森山博之
もりやま・ひろゆき 旭リサーチセンター、遼寧中旭智業研究員。早大卒後、旭化成工業(現旭化成)入社。広報室、北京事務所長などを経て2014年から現職。60歳。大阪府出身。
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