【高論卓説】自民党総裁選と地方創生 現実受け止めじっくり取り組む機会に
いよいよ自民党の総裁選が来月となった。与党トップを決める選挙、すなわち、首相を決める選挙なので、もう少し盛り上がっても良さそうだが、現状、「安倍さんで決まり」との雰囲気に満ちていて停滞気味だ。
確かに、安倍氏と石破氏の一騎打ちが確実な中、国会議員票(405)の7~8割を安倍氏が固めたといわれており、「勝負あった」の感がある。石破氏が固めたのは、自派閥と竹下派の参院議員の40~50票だ。1割程度である。
石破氏に勝機があるならば、地方票だ。前回2012年(15年は無投票再選)の総裁選で、最初の投票で安倍氏に50票以上の差をつけて勝利しているが、地方票で大差(安倍87、石破165)で勝ったことが大きい。結局、決選投票で敗れるが、その際、地方票は全く勘案されなかった。
今回は、決選投票では、405の国会議員票に加えて47の地方票が勘案されるばかりか、第1回投票でも国会議員票と同数の405の地方票が勘案される(これまでは300票)。地方重視は強化傾向にある。
ただ、私は、石破氏が地方票で安倍氏に地すべり的勝利を収めるのは無理だと思う。伏線は14年の地方創生担当大臣への石破氏の就任だ。第3次安倍内閣発足の際、安全保障法制担当大臣を打診された石破氏はこれを固辞し、代わりに提示された地方創生担当大臣に就任した。
いずれ来る総裁選に向けて、公職として地方行脚できることは非常に有利であり、当時外務大臣に留任した岸田氏などは、ほぞをかんだとも言われる。ただ、これが落とし穴だった。いわゆる「増田リポート」が出て、消滅可能性都市という人口減による地方消滅論が盛り上がる中、石破氏は、目に見える成果を残せなかった。これでは各地で「安倍より石破の方がよい」という機運を醸成するのは困難であろう。
何も石破氏を非難しているわけではない。誰がやっても、短期的に地方創生で成果を出すことは難しい。古くは、1970年代の田中角栄内閣の日本列島改造や80年代の竹下登内閣のふるさと創生などが典型だが、日本の地方創生は、東京一極集中をどう是正するか、という大テーマの下、予算の地域への振り向けが中心であったが、原資が豊かな時代ですら、あまりうまくいかなかった。
こうした反省も踏まえ、石破氏は、新たな交付金制度の創設など、これまで同様の予算の地域展開だけでなく、アクティブシニアを地域に移しての新たなコミュニティーの創設(CCRC)、新たな旅行商品や地域産品創出を図る地域商社的組織の構築(DMO)、ビッグデータを地域活性に活用するシステムづくり(RESAS)など、矢継ぎ早に色々な手を打った。その後の地方創生担当大臣は、一般には名前すら知られていないが、彼らのパフォーマンスと比べれば、石破氏の功績は一目瞭然だ。
しかし、これらの施策をもってしても、やはり短期的に成果を出すことは難しい。そもそも、地方創生の成功のカギは、地域アイデンティティーを正しく理解しつつ、現状を変革しようとするリーダー(始動者)人材の育成や導入でしかあり得ないので、少なくともマクロに達成しようとする限り、時間がかかるに決まっているのだ。
こうした「不都合な真実」も受け止めつつ、次期内閣では、再度、本格的に地方創生に向き合ってもらいたいと切に願う。
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【プロフィル】朝比奈一郎
あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授。45歳。
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