【中国を読む】不安定な展開続く金融市場、どのような動きが考えられるか

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 年明け以降の中国金融市場においては、株価は弱含む展開が続いている上、人民元の対ドル相場も下落が進むなど、一部に「チャイナ・ショック」と揶揄(やゆ)された2015年を連想する向きもある。ただし、「チャイナ・ショック」は中国国内の要因が大きく影響した一方、足元の状況は米中貿易摩擦など外的要因に左右される部分が多く、中国自身が影響力を行使し得る部分は限られている。先行きの中国金融市場を取り巻く状況について、どのような動きが考えられるか。(第一生命経済研究所・西●徹)

 米国債売却で対抗か

 中国株式市場をめぐっては、15年上旬にかけてバブル的な上昇に見舞われ、その後は一転して大幅な調整圧力が掛かる異常事態に見舞われた。

 16年初めを底に株式相場は上昇に転じ、その後は中国経済自体が持ち直しの動きを鮮明にしたことも追い風に上昇基調を強めた。

 しかし、18年の年明け以降は一転して調整局面となるなど、再び勢いを欠く展開が続いている。この背景には、中国当局が企業部門による過剰債務が金融システミックリスクに波及することを抑えるべく、デレバレッジ(債務圧縮)の促進と供給側改革の深化に向けて金融政策を引き締め方向にシフトさせたことが影響している。

 結果、いわゆる「理財商品」に代表される信託商品残高は年明け以降減少に転じるなど、効果を上げる動きもみられる。

 ただし、その後は米トランプ政権による貿易制裁の動きが活発化し、米中貿易摩擦の激化が懸念されている。

 足元では製造業を中心に先行きの輸出に下押し圧力が掛かることを警戒する動きも強まっている。さらに、輸出鈍化に伴う企業業績の悪化を警戒する向きも株式相場の上値を重くしているとみられる。

 また、米中貿易摩擦をめぐっては、米中双方の輸入額に大きな開きがあり、仮に米国が貿易制裁の対象を広げた場合においても、中国が対抗措置として対象を広げるには限界がある。このため、金融市場においては中国が米国債の売却や人民元相場の切り下げなどを通じて対抗するとの見方がくすぶる。

 昨年の人民元相場の対ドル相場は上昇基調を強めてきたが、年明け以降は一転して頭打ちした後、足元では下落基調が強まっていることもこうした見方を反映している。

 ただし、先に述べたように年明け以降の株価は下落基調が続いており、仮に当局が人民元の切り下げに動けば資金流出を誘発して「チャイナ・ショック」の二の舞いとなるリスクもある。

 従って、足元の状況においては、当局は米国への対抗措置として人民元安誘導を通じた輸出下支えを図ることも難しくなっている。

 自由化で介入は困難

 なお、共産党は7月末に開催した中央政治局会議において、年後半の経済運営に関して、財政および金融政策を通じて景気の下支えを図る方針を決定している。

 特に、金融政策については緩和方向にシフトしており、財政政策も「的を絞ったインフラ投資」を通じて積極化を図るとみられる。しかし、こうした政策転換にもかかわらず、足元の株価は上値が重く、米中貿易摩擦の悪影響が重しになっているとみられる。

 以前の「チャイナ・ショック」の際には「国家隊」と呼ばれる国営銀行や国営企業が買い支えに動いたものの、金融市場の自由化の一環として中国A株は今年6月から「MSCI新興国指数」に組み入れられたため、以前のような介入が難しくなっていることも相場反転の妨げになっている可能性がある。

 習近平政権はこのところ、改革開放路線の一環として金融市場の対外開放を進めてきた。しかし、この動きに伴って、かつてと比べて当局の意向を盾にさまざまな影響力を行使することが難しくなっている。

 当局の景気下支え策を受けて金融市場が浮揚する可能性はあるものの、当面は不安定な展開が続くことも懸念される。

【プロフィル】西●徹

 にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。40歳。福岡県出身。

●=さんずいにウかんむりに眉の目が貝