【ビジネスアイコラム】災害列島の自滅誘う消費増税 税収減、インフラ投資抑制の悪循環再び
相次ぐ地震と豪雨・台風被害。日本はまさに災害列島であることを再認識させられたのだが、自民党総裁選では、安倍晋三首相と石破茂元地方創生相の両候補とも来年10月の消費税増税を既定路線としている。デフレ圧力を呼び込む消費税増税に踏み込みながら、国土保全や地方創生を図るとは甘すぎるのではないか。
消費税と自然災害は無関係とみなす向きもあるだろうが、天災はすなわち人災である。人災とは政策の無為または失敗を意味する。国土の安全は治山治水インフラ、それを維持、運営するコミュニティーと組織・機構が整備されなければならない。支えるのはカネである。
財務官僚が政治家やメディアに浸透させてきた「財源がない」という呪文こそは、国土保全に対する危機意識をマヒさせ、インフラ投資を妨げてきた。「財政健全化」を名目にした消費税増税と緊縮財政によって、デフレを呼び込み、税収を減らして財政収支を悪化させ、さらに投資を削減するという悪循環を招いた。
東日本大震災に限らない。今夏、中国地方を襲った豪雨災害や、北海道地震後の全域停電、交通マヒでも、政府・与党はもっぱら事後の大盤振るまいにきゅうきゅうとし、緊縮財政支持メディアは「想定外」だと済ます当事者の無責任ぶりを見過ごしてきた。いずれも「備えあれば憂い無し」とのインフラ整備の原点を忘れている。
緊縮財政路線はアベノミクスの下でも一貫している。2017年度までの財政収支を計算してみると、アベノミクスが本格化した13年度から17年度までの合計で、国民から12.8兆円の需要を吸い上げている。雇用者が受ける報酬はその間、25兆円余り増えたが、政府が民間需要の増加分の5割を奪って、借金返済に回している。その結果が内需の伸び悩みである。家計は消費を抑えて預金を積み増し、企業は金融資産を膨らます。
他方で、インフラを主体とする公的固定資産の老朽化が進む。内閣府「国民経済計算」によれば、公的資産の劣化、耐用年数切れを示す「減耗」は毎年24兆~25兆円に上るが、公共投資は27兆円前後にとどまる。つまり減耗部分を除く純公共投資はアベノミクスの下でも2兆円前後にすぎない。予算が抑制されれば、当事者の自治体の意識も萎縮する。自治体は規制を緩め、地元民が過去に住まなかった危険地域に家が建つ。治山治水への投資はおろそかになる。広島県や岡山県などで起きた大規模な山崩れや洪水は人災とみるべきだ。
消費税に代わる財源はある。デフレ圧力の下、余剰マネーは膨張を続けている。リーマン・ショック後、17年度までの10年間をとってみよう。家計の現預金は167兆円増えたのと対照的に家計消費増加額は4.7兆円にとどまり、14年度の消費税増税負担分を差し引けば4兆円減った。設備など企業の有形固定資産増加額は16兆円にすぎないが、株式などの金融資産は240兆円増えた。
家計や企業で使われずに余る数百兆円ものカネの一部、例えば100兆円を国債によって吸い上げる。毎年10兆円ずつ、10年間でインフラ投資に回し、防災のための総合計画を推進する。大地震、巨大台風に対し、国土は保たれ、内需は拡大する。経済に好循環が生まれ、税収は増え、増税は不要となる。それこそが日本再生、地方創生というものだ。
もとより、国家の政策とは、安倍首相が強調するように「政治主導」で決まる。家計簿式に単純な収支計算によって国家予算の配分を決める財務官僚に任せる従来の方式では大規模で長期にわたる資金を動員する国土安全化計画を遂行できるはずはない。(産経新聞特別記者 田村秀男)
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