【専欄】“ハイテク・イノベーションセンター”深センの発展支える豊富な資金
中国の深セン(広東省)が、いまや北京・中関村をしのぐほどのハイテク・イノベーションセンターとして目覚ましい発展を遂げている。とりわけ驚くのが豊富な資金規模である。資金源はベンチャーキャピタル、政府補助金、それに成功したベンチャー企業からの投資だが、それぞれが半端ではない。日本でもこのところベンチャーキャピタルが増えているが、その規模は深センには及びもつかない。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)
中国の昨年のベンチャー投資金額は約4兆5000億円。うち深センは2~3割を占めるといわれる。昨年の日本のベンチャーキャピタルは約2700億円だったので、深センだけでも日本を大きく上回っている。
深セン市内に前海蛇口自由貿易区という開発区があり、建設が進んでいる。そこには、金融エリア「ファンド・タウン」があり、世界中の投資家を誘致している。すでに30数社が入居の意向を示しているという。
だが日本のある銀行の現地駐在員に聞いてみると、日本の投資家はとても入れないという。なぜなら日本の投資家はせいぜい1件の投資額が1億円程度だが、この開発区では1億元(約16億円)以上でないと受け入れない。投資の規模が1桁違うと言うのだ。
政府補助金も極めて多い。とりわけ多いのが深セン市政府からの資金供与である。深セン市は住民の平均年齢が32歳余りと若いので、社会保障費がそれほどかからない。しかも新興企業からの法人税が増えているので、財政に余力がある。
中心となるのは、グローバル人材の誘致策である。ノーベル賞受賞者ら優秀人材には、最高で1人当たり700万元の研究補助を支払うという。
海外留学生の帰国も大いに奨励している。中国では「海亀族」と呼んでいるが、こうした帰国者が深センでは約8万人もいるという。あるロボットの会社で最高執行責任者(COO)をしていたのは、米国の大学院で学んだ後、米マイクロソフトで20年も働いた経験のある「海亀族」だった。
もっともいまでこそイノベーションが軌道に乗り、各方面から資金が集まってきているが、その勢いが鈍ってきたときにどうなるだろうか。既に電気自動車(EV)分野では、政府の補助金が減るのではないかとの噂から、トップメーカーBYD(比亜迪)の株価が下がるという現象も出始めている。
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