【インタビュー】米中貿易摩擦、対話や譲歩の流れも 東京財団政策研究所主席研究員・柯隆さん
--米国と中国との貿易摩擦が激化している。考えられる今後のシナリオは
「ベストシナリオは、中国の輸入品の関税が高まることによる過度のインフレを嫌がり、米国側が中国に対話を持ちかけることだ。ワーストシナリオは、中国が保有する約1兆2000億ドルの米国債の売却を持ちかける駆け引きだ。ただ、可能性が高いのは、2000億ドル規模の中国製品に対する追加関税が発動されれば、それを取り下げるよう中国が譲歩に動く流れだろう」
--貿易摩擦が激化した原因は
「2008年のリーマン・ショック時に中国が実行した4兆元の景気刺激策の大半が国有企業に流れ、鉄鋼などの過剰生産をもたらした。その結果、米国などへのダンピング(不当廉売)輸出が横行し、米国の対中国の貿易赤字が拡大したことが米中貿易摩擦の遠因となった」
--中国の台頭が20カ国・地域(G20)など国際会議の機能不全を招いている
「多国間主義に懐疑的なトランプ米政権が国連の分担金の負担軽減を訴えるなど、国際会議で米国がリーダーとして機能しなくなった。米国の後退に伴い、今は中国がグローバルリーダーを狙っている。その最大のツールが中国が提唱する巨大経済圏構想『一帯一路』だ。ただ、情報開示の透明性などが欠如しており、国際化を目指す中で軋轢(あつれき)やズレが生じている」
--日本はどのように対応していくべきか
「日本と米国の最大の違いはシンクタンクの力だ。米国では国が正式に認めているシンクタンク約400社が世界の経済情勢を綿密に分析して、国際的な経済戦略を練っている。シンクタンクは経済戦略の羅針盤だが、日本はその力があまりにも弱い。こうした戦略基盤を日本も用意する必要があるだろう」
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【プロフィル】柯隆(か・りゅう)
中国南京市生まれ。1988年来日。愛知大法経卒。名古屋大大学院修士課程修了。94年4月から長銀総合研究所国際調査部研究員。富士通総研経済研究所主席研究員などを経て、2018年から現職。静岡県立大グローバル地域センター特任教授を兼務。
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