議員なり手不足、住民の関心低下…待ったなしの地方議会改革

 
意見交換をする北海道芽室町議と住民=2016年10月(芽室町議会提供)

 地域住民の代表として自治体首長など行政を監視する役割を担う地方議会。1990年代に始まった地方分権改革に伴い、条例制定権の拡大など段階的に機能が強化され、行政と住民の橋渡し役としての重要性を増している。一方、人口減少社会の到来を背景に、小規模な市町村では議員のなり手不足が年々深刻化。住民の関心低下や「政治とカネ」といった難題も抱える中、地方議会の在り方をめぐり模索が続く。

 議会に対する住民の関心を高めようと、情報公開などの改革を進めてきた北海道芽室町議会。早稲田大学マニフェスト研究所による地方議会の改革度調査では、2014年度から4年連続で1位に輝き「議会改革のデパート」とたたえられた。

 審議ネット配信

 道東部に位置する人口約2万人の芽室町。ジャガイモやトウモロコシなど農産物の生産が盛んな町は近年、隣接する帯広市のベッドタウンとして発展している。

 だが、1990年代には80%を超えた町議選の投票率は回を追うごとに低下し、2011年には60%台に落ち込んだ。議会は「これ以上低下すれば存在意義がなくなる」(町議)との危機感から改革に乗り出した。

 12年に「住民に開かれ、分かりやすく、活動する議会」とのスローガンを掲げ、まず情報公開を徹底した。「取り組みが見えない」との批判も強かったため、本会議のほか、委員会や全員協議会のインターネット中継も実施。毎月発行の広報誌に加え、会員制交流サイト(SNS)でも積極的に情報発信している。

 道内で最大震度7を観測した地震から5日後の9月11日、停電で延期していた委員会は17年度決算を審議した。「町内会への補助金は効果が薄いのではないか」。期限内の納税を啓発するための補助金などをめぐり、議員と執行部が応酬を重ね、予定終了時刻を過ぎても議論が続いた。

 「行政の追認機関」と皮肉られるような緩んだ雰囲気はなく、町職員は「気が抜けない」と語る。審議がネット配信されることから「見られる緊張感があり、議論も活発になった」(町議)。

 諮問会議を設置

 町議会は住民参加にも力を入れる。住民から選ばれた委員5人からなる「議会改革諮問会議」を設置。15年に会議の提言を踏まえ、委員会数を3から2に減らす代わりに一つの委員会に所属する議員数を増やし、審議の活性化につなげた。町議会の広瀬重雄議長は「提言によって議会の機能は強化された」と話す。

 12年に始まった「モニター制度」では、毎年20人の住民とまちづくりや子育て支援などについて意見交換を実施。住民の声を政策に反映させようと委員会の開催も増やしており、17年度は11年度より34回多い計140回となった。

 諮問会議委員長の自営業、太田寛孝さん(56)は「議員と交流する中で、行政との橋渡し役として、議会が重要な存在だと理解できた住民は多い」と語る。

 とはいえ15年の前回町議選の投票率は過去最低の65.06%だった。人口減少や高齢化で地域社会の衰退が進む中、行政や政治に対する無関心層への浸透が課題だ。

 広瀬氏は「子育てや介護といった行政サービスの内容を議会で決めていることを訴え、住民の関心を高めていきたい」と力を込めた。

 ■国の「押し付け」反発 活動費も課題

 第1次分権改革の成果として1999年に成立した地方分権一括法は、地方議会の機能を強めるため、条例制定権の拡大などを盛り込んだ。国の仕事を自治体に下請けさせる「機関委任事務」が廃止され、地方議会が関与する業務も増えたためだ。

 2012年の地方自治法改正では議会の開催時期を拘束せず、一年を通じて随時開ける「通年議会」が法制化された。北海道栗山町議会は06年、住民参加の推進などを明記した全国初の議会基本条例を制定。各地の議会にも条例制定の動きは広がり、一問一答方式の質疑応答や議会報告会などが実施されている。

 一方、人口減少が進む小規模自治体では議員のなり手不足が深刻になっており、15年の統一地方選で改選された町村議会のうち、無投票は24%に上った。高知県大川村の和田知士村長は昨年6月、議会の代わりに有権者が予算案などを直接審議する「総会」の設置検討を表明。国や自治体では危機感が強まった。

 総務省は有識者研究会を立ち上げて対応を検討。今年3月の報告書で、少数の議員による「集中専門型」と、兼業・兼職制限を緩和する「多数参画型」の2つの仕組みを、小規模市町村が選択できるよう提言した。7月に発足した政府の地方制度調査会でも論点となる見通しだが、各自治体の事情や意見を反映しない国の「押し付け」に地方側の反発は強く、議論は難航が予想される。

 政務活動費の扱いも課題となっている。議員の調査研究費に充てることを目的に政務調査費の名称で01年に創設されたが、不正が相次ぐためだ。

 14年には使途をめぐり、兵庫県議が虚偽の日帰り出張を釈明した「号泣会見」で話題となったほか、16~17年に富山市議会など富山県内の3議会で架空請求などが相次いで発覚、県議や市議計18人が辞職する事態に。住民の信頼を取り戻すため、透明性確保の仕組み構築が求められている。

 □広瀬克哉・法政大教授

 ■住民の意見反映させた政策提言を

 地方議会ではこの10年ほどの間に、行政に対するチェック機能の強化や、住民との対話といった面で改革が進んでいる。2006年に発覚した北海道夕張市の財政破綻や「平成の大合併」を受け、小規模自治体を中心に今後どうやって生き残るかが問われ、議会として政策への意思決定をより一層迫られたためだ。

 具体的には、議会の基本理念やルールを定めた基本条例を800超の議会が制定し、議員が住民に定例会の経過などを直接説明する議会報告会の開催も広がっている。

 長野県飯綱町議会は、住民に政策立案の議論に参加してもらう「政策サポーター制度」を導入し、経験者から議員も誕生した。こうした議会は討論も活発で、「行政の追認機関」というイメージは変わってきている。

 改革の流れは定着してきたものの、住民に認知されていないこともあり、過去3回の統一地方選で投票率は上がっていない。東日本大震災の被災自治体や、人口減少が止まらない小規模自治体では、議員の仕事をする余裕がある人材が枯渇し、なり手不足は深刻だ。報酬が議員活動の負担に見合っていないこと、住民に「公共サービスの消費者」という受け身意識が強いことも背景にある。

 増加が問題になっている空き家・空き地対策や、地域で支え合う高齢者福祉などの政策を進めるには、住民と行政の協働が欠かせない。地方議会は議論の内容についての積極的な情報発信で住民参加を促すとともに、住民の意見を反映させた政策を提言していく役割が求められる。

【プロフィル】広瀬克哉

 ひろせ・かつや 1958年奈良県生まれ。専攻は自治体学。著書に「『議員力』のススメ」など。