若者憧れの「eスポーツ」選手、韓国で人気 サッカー、野球に次ぐ産業に

 
ソウル市江南で開かれたeスポーツの大会=8月31日(共同)

 コンピューターゲームの技を競う「eスポーツ」が今夏のアジア大会で公開競技となり、注目を浴びている。競技人口は世界で1億人以上とされ、日本企業も参戦が相次ぐ。韓国は、20年近く前に協会ができた先進国だ。生計が立てられるほどの高額賞金を獲得して社会的評価もある選手を顕彰する「殿堂」もオープンし、多くの若者が憧れる職業になっている。

 100分の1秒で勝敗

 「大一番で操作ミスです。何ということだ!」。8月31日夜、ソウル市江南で開かれたアクションゲーム大会の決勝戦。司会者の絶叫と同時に対戦相手の隙を突いて繰り出された大技が決まると、大型モニターを見ていた観客が、どよめいた。

 100分の1秒の判断が勝敗を分けるとされる対戦には約1200人が参加。その頂点に立ったキム・テファンさんは、賞金1500万ウォン(約150万円)を獲得し「緊張したけど、相手の失敗をうまく利用できた」と満足げに話した。

 キムさんが初めて大会に出たのは15歳のころ。テレビ番組でeスポーツを見たのがきっかけだ。

 韓国では、1998年に登場した戦略シミュレーションゲーム「スタークラフト」が爆発的人気を呼び、テレビの専門チャンネルが開設されたほか、各地に「PC房」と呼ばれるインターネットカフェが広まり社会現象となった。

 対戦の様子を司会者や応援団が盛り上げ、メディアが中継することで、ゲームをスポーツのように楽しんだり観戦したりする土壌もできた。

 97年のアジア通貨危機で深刻な不況下にあった韓国では、政府が有望な市場に着目して支援に本腰を入れ、2000年にeスポーツ協会が発足した。官民共同で競技場の整備などプロ選手の育成を担い、eスポーツはサッカー、野球に次ぐ規模の産業に発展した。

 過剰依存の危険性も

 今年8月にソウル市内にできた「名誉の殿堂」に写真が飾られているイム・ヨファンさんは「皇帝」と称されるスタークラフトの伝説的選手で、若者の憧れの存在だ。開館式では「1日1食の生活を送りながら夢を育んできた。本当に光栄だ」と胸を張った。

 ただ、ゲームにのめり込むあまり、夫婦が生後3カ月の娘を餓死させたり、何日もほとんど寝ずにゲームをした人が急死したりする問題も起きた。

 若者のネット利用時間は増え続けている。女性家族省の報告書によると、スマートフォンへの「過剰依存危険群」に属する青少年は15年に31.6%に達した。「ネット大国」の負の側面が社会に影を落としているとの指摘もある。

【用語解説】eスポーツ

 エレクトロニック・スポーツの略。コンピューターゲームやビデオゲーム、スマートフォンを使って対戦し、スポーツ競技と捉える。日本でもサッカーの「ウイニングイレブン」や格闘ゲームの「ストリートファイター」が人気。欧米や中国、韓国では高額賞金の懸かる大会が開かれ、観客は司会者の実況中継を聞きながら大型モニターで観戦することが多い。有名プロ選手は年収1億円超。身体運動を伴うスポーツと同列に扱うべきか議論もある。(ソウル 共同)