新たな在留資格に経済界期待 入管難民法改正案、「移民」懸念で高いハードル

 
スーパーで導入が増えているセルフ精算機。ITなどを活用した省力化投資も加速しているが、流通業界の人手不足感は強い

 政府は、外国人受け入れを拡大するため、新たな在留資格創設を盛り込んだ入管難民法改正案を24日召集の臨時国会に提出する。12日に示された改正案の骨子は、禁じてきた単純労働分野での就労を想定しており、深刻な人手不足に悩む経済界の要請に応えた形だ。一部の新資格は在留期限を更新し続けることが可能になる。政府は「移民政策とは異なる」と繰り返し強調し、来年4月の導入を見込むが、国会審議は波乱含みだ。

 外食・コンビニ対象も

 サービス業や農業、建設など慢性的な人手不足に悩む業界は、外国人の登用に積極的だ。大戸屋ホールディングス(東京)では、パート・アルバイト店員の15%以上が外国人。広報担当者は「都市部だと店員の半分以上の店も多い。外国人店主は珍しくない」と話す。

 「覚える仕事は多いけど、もっと働きたい」。東京都文京区のコンビニエンスストアで働く女性は、流暢(りゅうちょう)な日本語で語る。ネパール西部の少数民族出身で、日本語学校に通う。就労は原則週28時間以内とされる留学生の資格で滞在。「日本にいられる期間が限られている。長時間働きたい」と訴える。

 新制度では、一定の技能を持つ「特定技能1号」と熟練者対象の「特定技能2号」が創設される。2号では家族の帯同も認め、条件を満たせば日本で住み続けられるようになる。

 新たな在留資格は、外食やコンビニ業界が対象となる可能性もある。ユニー・ファミリーマートホールディングスの高柳浩二社長は「現場の人材の切迫感が強い。流通業界も対象に加えていただけるとありがたい」と力を込める。

 「日本人の雇用失う」

 一方、政府関係者は保守層の反発が強い「移民」の受け入れとされることに、警戒感をあらわにする。「移民とは明確に異なる」「受け入れは人手不足への対応」。山下貴司法相は12日の閣議後会見で語気を強めた。

 政府は1988年、第6次雇用対策基本計画で「単純労働者の受け入れは、十分慎重に対応する」という基本方針を閣議決定。長年堅持し、技能実習生や留学生といった、表向きは就労を目的としない在留資格を持つ外国人に単純労働を担わせてきた経緯がある。

 政府関係者は「移民」を連想させる「永住」の文言に神経をとがらせる。法務省幹部も「2号の資格を得ても、あくまで永住要件の一つを満たす可能性があるだけだ」と予防線を張る。

 自民党には官邸主導で外国人受け入れ拡大策を決めたことに「拙速な進め方だ」(保守派議員)との不満も。安倍晋三首相は「移民政策ではない」と繰り返すが、野党は「移民を受け入れるか受け入れないか、国家の大きな転換点だ」(立憲民主党の長妻昭代表代行)と牽制(けんせい)する。

 国民民主党は12日、この問題のプロジェクトチームを初開催。「実質的な移民ではないか」「政令に委ねる部分が多すぎる」などの懸念が相次いだ。立民と国民の支持団体である連合も「日本人の雇用が失われる」と法案に難色を示す。国民の泉健太政調会長は「国内の労働者をないがしろにしないことがまず第一だ」と強調した。

 政府、与党は臨時国会で改正案を成立させる方針だ。ただ、会期は1カ月半程度で、中国訪問など安倍首相の外遊が続き審議日程が限られる。野党は衆院本会議と委員会の質疑に首相の出席を求める「重要広範議案」として扱うよう要求。会期内成立はハードルが高い。