RCEP交渉、実質妥結へ自由化率やルールでなお隔たり

 

 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉では、関税を撤廃する品目の割合を示す貿易自由化率や、知的財産権の保護といったルール分野などで参加国間の隔たりはなお大きい。

 日中韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国によるRCEPの閣僚会合が12日午後、シンガポールで開幕した。14日に控える首脳会合で一定水準での合意となる「実質妥結」を表明できるか、閣僚らが詰めの議論に入る。

 2013年から始まったRCEP交渉では、関税削減や知的財産権保護、電子商取引のルールなど18の分野を対象に議論しており、これまでに「経済技術協力」など5分野で合意している。「残るのは政治的な判断を要する重要な論点」(世耕弘成経済産業相)となっており、今回は主要分野で合意する実質的な妥結をした上で、来年の最終合意を目指すシナリオを想定している。

 参加国はトランプ米政権の保護主義的な通商政策への危機感を背景に、早期妥結を目指すことでは一致している。このため、関税の撤廃割合を示す自由化率については、当初は低く設定することで合意し、将来的に90%程度にまで引き上げる案が浮上している。

 域内での工業製品の関税が下がれば先進国の日本などの貿易には有利だが、インドやミャンマーなど工業が十分に育っていない国には不利になる。こうした新興国に配慮するため、自由化率の目標達成までの猶予期間を設けることも検討している。

 それでも、対中国赤字の拡大に警戒感を強めているインドが高い自由化率に難色を示すなど、参加国の間では隔たりが大きい。

 ルール分野でも対立がある。知的財産権保護や電子商取引、投資などの高水準なルール整備に消極的な中国やインドと、「質の高い協定」(世耕氏)を求める日本やオーストラリアなどとの間には開きがあり、交渉は難航している。

 今回の閣僚・首脳会合で実質的な妥結に至らなければ、大幅な軌道修正を迫られ、最終合意が遠のく恐れがある。(大柳聡庸)