RCEP、来年合意目指す 中印と対立も「漂流」回避へ
日中韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の首脳会合が14日、シンガポールで開かれ、来年の最終合意を目指す方針を確認する見通しだ。インドや中国と関税撤廃や知的財産権保護などのルール作りで溝が埋まらず、12日に行われた閣僚会合では目標としていた年内の実質的な妥結が見送られた。米国の保護主義的な動きが強まるなか、参加各国は来年の合意を目指すことで、RCEPの「漂流」をなんとか避けたい考えだ。
「これ以上、閣僚級で何かやることはない」。12日夜の閣僚会合終了後、日本の政府高官はため息まじりに話した。
米国の保護主義的な政策に対抗するため、各国がRCEPの早期妥結で一致し、12日に今年5回目となる閣僚会合をシンガポールで開いて詰めの協議を行った。日本側からは「RCEPは低い水準でもいいから、早く妥結すべきだ」(与党幹部)との声も上がり、合意への機運が高まっていた。それでも12日の閣僚会合では協議を継続しても進展がみられないと判断し、日程を1日残したまま交渉を終えた。
2013年から続くRCEPの交渉では、18分野を対象に議論し、これまで経済技術協力など5分野で合意。だが関税引き下げや知的財産権保護のルール作りなど、利害が対立しやすい分野は解決していない。
「最大のハードルとなったのはインドだ」。12日の閣僚会合で妥結できなかった要因について、政府関係者はこう打ち明ける。インドは関税撤廃により中国からの製品流入が増えることに警戒感を強める。インド商工省のデータによると、2017年度の対中貿易赤字は約630億ドル(約7兆1000億円)。結局、関税を撤廃する品目を少なくしたいインドと、各国は折り合えなかった。
ルール作りの分野も対立している。電子商取引では日本やオーストラリアなどが自由な流通を求める一方、中国は国家がデータ管理すべきと主張する。
RCEPが実現すれば、世界の人口の約半数、国内総生産(GDP)の3割を占める巨大な経済圏が誕生する。ただ、自由化の水準が低ければ、その効果は限定的となる。一定の水準を保ちながら、いかに早期妥結に持ち込めるのか、各国首脳のリーダーシップが問われている。(大柳聡庸)
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