カンボジア、中国人観光客7割増 1~9月140万人、依存度高まる

 
世界遺産のアンコールワット=カンボジア・シエムレアプ州(木村文撮影)

 カンボジア観光省によると、今年1月から9月までにカンボジアを訪れた外国人観光客は約430万人で、昨年の同期と比べて11.8%増えた。最も多いのは中国人で、前年同期より7割以上伸びた。

 この9カ月間にカンボジアを訪れた中国人は約140万人。続いてベトナム人とラオス人がともに約98万人で並んだ。中国人が群を抜いて多いことが分かる。ほかは、タイ人、韓国人、米国人、日本人の順になっている。

 韓国人客ら減少

 カンボジア政府は2016年に、中国人観光客を20年までに200万人にまで伸ばす計画を発表しており、国を挙げて中国との関係を強化している。今年5月には首都プノンペンで、中国観光当局との共催による観光フォーラムを開き、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」のもとに協力し、カンボジアの観光を発展させることで合意した。

 こうした戦略が奏功した形だが、一方でベトナムやラオス、韓国からの観光客は減少しており、観光セクターにおいても中国への依存が高まっているといえる。

 カンボジアには、17年の1年間で約560万人の外国人が訪れており、うち中国人は2割以上となる120万人だった。

 カンボジアは11月下旬から乾期となり、本格的な観光シーズンに入った。観光省によると、今年は昨年を上回る年間600万人以上の外国人客の来訪を目標としている。

 外国人観光客の増加の一方で、カンボジア人の外国旅行熱も高まっている。観光省によると、今年1~9月に外国旅行へ出かけたカンボジア人は約146万人で、前年同期の約132万人と比べ10.6%増加した。

 これを報じた現地紙によると、ある旅行社ではカンボジア国内からの外国旅行が前年比で約30%増加したという。行き先は、マレーシアやシンガポールなど近隣アジア諸国が多いが、ヨーロッパ、オーストラリア、米国、ドバイなど遠隔地に足を運ぶ旅行客も増えている。

 また、国内旅行を楽しむ人も増えている。観光省によれば、11月21日から週末を含め5連休となった今年の「水祭り連休」では、カンボジア国内で約92万5000人が地方旅行に出かけた。前年の84万2000人と比べ15%以上の伸びで、国内旅行がカンボジアの人々にとって、より身近になったことを示している。

 訪問地で目立つのは、世界遺産アンコールワットなどを抱える北西部のシエムレアプで、ここには水祭り期間中に、前年比18.5%増の約33万人が訪れた。うちカンボジア人は約30万人に上る。また、南部の海岸に近いカンポットも、シアヌークビルに次ぐ海辺の観光地として注目されている。水祭り期間中に約10万人が訪れており、うち約90%がカンボジア人で前年比19%増だった。

 エコ旅行に注力

 カンボジアにとって観光セクターは、縫製や建築と並んで、国の経済成長を牽引(けんいん)する産業だ。ただ、アンコール遺跡群、サンボープレイクック遺跡、プレアビヒア遺跡の3つの世界遺産、そして海岸リゾート地のシアヌークビル以外には、国内外の観光客を引きつける観光資源の開発が進んでいるとはいえない。

 カンボジア政府は近年、遺跡とカジノ以外の観光として、グリーンツーリズムに力を入れている。観光省によると、国内24県のうち16県で60カ所近いグリーンツーリズムの拠点開発が取り組まれており、近く、エコツーリズムに関する法律も制定される見込みだ。

 長く続いた内戦と混乱のため、カンボジアには近隣諸国に比べてまだ豊かな自然が残されている地域が多い。カンボジアが自然と共存する「エコツーリズム大国」となれるかどうか、注目したい。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)