社会保障費、自然増4768億円…予算案、選挙にらみ切り込み不足

 

 平成31年度予算案で一般会計総額の3分の1超を占める社会保障費は、高齢化などに伴う自然増を概算要求時の6千億円から4768億円に抑えた。薬価改定などによる抑制額は約1200億円と例年に比べると少なく、団塊世代が75歳以上の後期高齢者入りして社会保障費が急増する34年度を前に抑制策は温存した格好だ。

 「国民の反発が強いので、しばらく凍結をお願いしたい」

 今月13日午後、タイ・バンコクで国際会議に出席していた日本医師会の横倉義武会長の携帯電話に安倍晋三首相から連絡が入った。妊婦が医療機関を外来で受診した際に請求される「妊婦加算」について、「妊婦税だ」などと批判が急速に高まったことを受け、業界団体トップから事実上廃止することへの了解を得るためだった。年末に予算編成にほとんど影響のない話題が社会保障関係者の最大の関心事となるほど、31年度予算案で社会保障費をめぐる懸案事項が少なかった。

 ここ5年間の自然増の抑制額は1300億~1700億円だったのに対し、31年度予算案では1200億円で済んだ。薬価などの引き下げで503億円、40~64歳の介護保険料の算定方法で収入に応じた「総報酬割」を段階実施することで614億円、生活保護の見直しで34億円を捻出した。目立った国民の負担増はなく、自民党の厚生労働族中堅は「もっと削る余地はあった」と明かす。

 来年は参院選や統一地方選があり、国民の反発を招く負担増は徹底的に排除。後期高齢者医療制度の保険料軽減措置を来年10月に廃止するに当たり負担増となる対象者には1年間限定で負担増を猶予するほどだ。地域医療・介護の態勢強化で設けられている「地域医療介護総合確保基金」の200億円積み増し、医療機関のIT化推進のための基金300億円の創設も、業界団体への配慮の色が強い。妊婦加算の凍結に安倍首相が動いたのも、選挙対策の一環といえる。

 ただ、今回の予算編成の裏テーマは、34年度から急激に増える社会保障費を抑制するための材料をどれだけ温存しておくかだった。参院選が終われば、政府内で負担増を含む社会保障改革の議論も始まる見通しで、「いかにショックを抑えるかがポイントになる」(閣僚経験者)。31年度予算編成は嵐の前の静けさに過ぎないともいえる。(桑原雄尚)