ESG投資4年で20倍超に 債券発行額、社会的責任との両立で拡大

 

 社会的課題への取り組みを評価して投資資金を振り向ける「ESG投資」で、企業活動のうち環境対策に資金の使途を限った「グリーンボンド」などの債券発行額が4年間で20倍超に達する見通しとなったことが6日、分かった。最近は利回りの高さも期待できる投資信託も出ており、社会的責任が重視される機関投資家だけでなく個人投資家からの需要も高まるなど、裾野の広がりを見せている。

 みずほ証券によると、国内の法人や団体が発行したESG関連債券の発行額は平成26年度の330億円から、29年度には4300億円と右肩上がりで増加。30年度は最大8千億円まで膨らむ見通しだ。商船三井が船舶の排ガス浄化装置などを使途として昨年9月に発行した国内初の個人向けグリーンボンドは「通常の社債の約2倍の需要があった」(関係者)という。

 みずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストは「投資行動に社会貢献などの意義を求める機運が高まっているほか、社会的課題の解決に取り組む企業は潜在的な事業リスクも低く、中長期的な企業価値向上が見込まれている」と需要増の背景を分析する。

 一般社債より発行コストのかかるESG関連債券の投資効果に懐疑的な見方もある中、機関投資家の生命保険大手や証券会社では、先進技術などで社会課題の解決を図る企業や団体に対する「インパクト投資」の取り組みも進む。

 第一生命保険はロボットなどの最新技術で医療や健康などに寄与する国内ベンチャーへの投資を加速。同社は「長期投資が可能な生保の運用戦略を生かし、変化に対応する有望な技術に早期から投資できる」(運用企画部)と話す。野村証券は米国の運用会社と提携し、先進医療分野に投資する投資信託を個人向けに販売する。

 日本総合研究所創発戦略センターの渡辺珠子スペシャリストは「インパクト投資はリスクもあるが、投資家が社会貢献への実感を得られるほか、有望なベンチャー企業とのつながりを持てる副次的なメリットも魅力」と強調している。

【用語解説】ESG投資

 環境破壊などを伴った経済成長は持続しないとの危機感を背景に、企業の環境保全や社会問題、企業統治への取り組みを評価する投資手法。ESGは環境(ENVIRONMENT)、社会(SOCIAL)、企業統治(GOVERNANCE)の英語の頭文字。国連が2006年、機関投資家にESGの観点を考慮するよう求める「責任投資原則」を公表したのを契機として、欧米の機関投資家を中心に普及が進んでいる。