国内向けの災害警報、政府がアジアに導入ねらう 衛星活用、19年度にも実験
準天頂衛星「みちびき」を活用して国内向けに開発が進む災害警報システムをアジア太平洋地域にも導入しようと、政府が2019年度にも国外で実証実験を始めることが13日、国際協力機関「アジア防災センター」(神戸市)への取材で分かった。防災力強化で同地域に貢献し、災害時の製造業や物流への被害を軽減する狙いもある。
昨年11月に本格運用が始まったみちびきは日本版の衛星利用測位システム(GPS)の構築が主目的だが、小型端末と衛星の間で情報を直接送受信する機能も実用化が見込まれている。携帯電話など既存の通信インフラが被害を受けても、災害情報を伝達する手段として期待が高まる。
送受信範囲はアジアとオセアニアの一部に及ぶ。政府は国外での活用に向け、阪神大震災をきっかけに設立されたアジア防災センターと協力。企業や大学と連携して検討組織を立ち上げた。
関係者によると、昨年末に国際会議で概要を公表した。気象機関の情報を衛星が受け取り、該当地域の受信機に直送する仕組みで、対応するスピーカーや電光掲示板で避難を促す。今秋の実験開始に向けインドやパプアニューギニアと調整に入った。1万円程度の小型受信機も開発している。
国内では既に新潟県や和歌山県、高知県などで地震や津波の情報を受信する実験を開始。避難所に置いたパソコンから避難者やけが人の数を衛星に送り、離れた災害対策本部で集約する機能も試した。
将来的にスマートフォンに受信機を内蔵し、電話が通じにくい山中や海上、電波障害発生時でも活用できるよう研究している。
アジア太平洋地域では特に島嶼(とうしょ)部や山間部で災害情報の伝達が課題。同センターの担当者は「近年アジアで大規模な災害が発生しており、日本経済へ影響が大きい。技術協力は日本の利益にもなる」と話している。
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