【中国観察】中国の自動車市場「厳冬期」突入 28年ぶり減の要因は

 

 中国の自動車市場に変調が生じている。2018年の新車販売台数は28年ぶりの前年割れに陥り、中国自動車メーカーからは「厳しい冬に入った」と悲鳴が上がる。米中対立への懸念などから足元でも悪化傾向が続いており、中国政府は景気刺激策に打って出る構えを示す。ただ、安易な景気対策は問題の先送りにつながるとの指摘もあり、習近平指導部は経済の安定に向けて難しいハンドルさばきが求められている。

 天安門事件の翌年以来の前年割れ

 「自動車産業の厳しい冬がひっそりと訪れた。そして恐らく長く続くかもしれない」

 中国自動車大手「中国第一汽車集団」の奚国華(けい・こくか)総経理は今月12日、北京市内で行われたイベントで中国自動車業界が直面する深刻な現状をこのように表現した。国営新華社通信が運営する「新華網」など中国のニュースサイトが伝えた。

 それから間もない14日に発表された統計は、まさしく市場の厳冬期を感じさせるものだった。中国自動車工業協会が発表した18年の新車販売台数は、前年比2.8%減の2808万600台。前年割れに陥るのは、経済にも混乱をもたらした天安門事件(1989年)の翌年にあたる90年以来だという。販売台数は米国を上回り10年連続で世界トップとなったものの、3千万台の大台を目前にしてかつてのような勢いは失われている。

 市場の乱れに貿易摩擦が追い打ち

 中国自動車市場が28年ぶりというマイナス成長に陥ったのはなぜか。その主因として挙げられるのは、中国政府が打ち出した政策による市場の乱れだ。

 リーマン・ショック後の2009年以降、中国政府は断続的に小型車減税を実施してきた。景気刺激策として導入されたもので、延長などの末に最終的には17年末に終了している。

 ただ結果的に、一連の減税措置は新たな需要を喚起するのではなく、需要の先食いといった需要集中を生んだようだ。減税効果が無くなった2018年に入ると、前年末までの駆け込み需要による反動減の懸念が急速に現実化した。自動車ディーラーは販売テコ入れのため「値下げ合戦」を繰り広げているのが現状だという。

 そこに追い打ちをかけたのが、トランプ米政権との間で深刻化している貿易摩擦だ。米中対立が決定的となった7月以降、新車販売台数はマイナス基調が定着した。貿易戦争の激化を見込み、消費者の財布のひもが固くなっているとみられる。

 消費低迷は自動車以外にも広がっており、昨年11月の消費動向を示す小売売上高の伸び率は、03年5月以来15年半ぶりの低水準。年明け早々の今月2日には米アップルが、中国での販売不振を理由に業績予想を下方修正している。

 「一時しのぎ」になるのか

 習指導部にとり、自動車産業の大幅な悪化は看過できない問題とみられる。自動車は産業の裾野が広く、習指導部が最重要視する雇用など経済への影響が大きいためだ。

 自動車業界が呈している惨状を前に、習指導部は再び政府主導の景気刺激策に乗り出そうとしている。

 「自動車や家電などの消費を促す措置を講じる」

 中国のニュースサイト「中国新聞網」によると、国家発展改革委員会の寧吉●(=吉を2つヨコに並べる)副主任は8日、需要テコ入れのための景気対策の実施方針を示した。マーケット関係者の間では、景気刺激策の内容が早くも取り沙汰されているが、景気刺激策に対してはかねてより「一時しのぎ」(ロイター通信)という批判的な見方が根強い。

 また、景気刺激策が製造業の構造改革を後退させるという指摘もある。中国では地場の自動車メーカーが乱立状態にあるが、今回の未曾有の業界不振で「ゾンビメーカー」の淘汰(とうた)など適正規模への集約化が期待できたためだ。第一汽車の奚氏も「『適者生存、不適者淘汰』はこの時期における強いトーンになるだろう」と述べている。

 貿易戦争で景気の先行きが見通せなくなる中、習指導部はアクセルとブレーキを同時に踏むような難しい経済運営を迫られている。(三塚聖平)