担い手不足・放棄地を解消も…ソーラーシェア、現状の課題は
ソーラーシェアリングは、売電収入が農家の所得増加につながるほか、日本の農業が直面する担い手不足や耕作放棄地などの問題解決の一助になるとして導入された。始めるには(1)ソーラーシステムが簡易な構造で撤去が容易(2)営農の継続が担保できる、農機具の使用が可能(3)設置による減収率が周辺の平均の20%以内でなければならない-といった条件をクリアすることが必要だ。期間は3年で条件が守られれば更新できる。
千葉大学が農地に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同時に行う「ソーラーシェアリング」に対するアンケートを全国市町村の農業委員会を対象に実施した。結果では、ソーラーシェアリングのための農地転用許可件数は、2018年の8月までで1347件と4年前に比べて6.2倍に増えた。許可件数をみると、都道府県別には千葉県が313件と最多で、静岡県が173件、群馬県(132件)、徳島県(80件)と続いた。許可が一件もない県は、富山県、山口県、大分県の3県だった。
農林水産省が8日に公表した取り組み事例では、静岡県浜松市の中山間地で茶の栽培を行っている農家、岩手県紫波町の太陽光パネル施工業者が農業参入したケース、千葉県匝瑳市の3人の農業従事者が地域の荒廃農地の解消と地域農業の継続を目指すために導入した、などが紹介されている。いずれも「売電収入で経営が安定し、付加価値の高い有機農産物の生産拡大を実現するなど農業を後押ししている」(農水省)としており、今後もこうした好事例を増やしたい考えだ。
ただ、千葉大の倉阪教授によると、ソーラーパネルを設置後、作付け作物は、「ミョウガ」「サカキ」「しいたけ」「米」などに偏っているという。特に「しいたけ」は、「日がまったく当たらない倉庫でも栽培できるので、あえて農地でやる意味がない。ソーラーシェアリングの体をなしていない」と問題点を指摘する。ほか、ある地域では、「レッドクローバー(紫ツメクサ)」の栽培許可が下りた途端、周辺農家が一斉申請するケースが続出し、その地域がレッドクローバーだらけになったという。こうした計画性のない事例が続けば、「出荷価格に影響しかねず、持続的な営農ができない」(倉阪教授)とみている。
農業現場では、担い手の減少、高齢化の進行などにより労働力不足が顕著となっており、こうしたソーラーシェアリングなどの取り組みは、収入増に直結するため、農家の継続性や新規参入を促す追い風になることは間違いない。ただ、電力の買い取り価格は年々下がっており、導入を躊躇(ちゅうちょ)する農家が多いのも事実だ。農家が導入を「有益な手段」と判断できるような優遇措置を検討するなど制度を修正していく必要もありそうだ。(飯田耕司)
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