「鳥の楽園」取り戻せ NZ、50年までに外来種根絶へ
■わなや殺処分などで駆除図る
ニュージーランドで2050年までに、イタチやオーストラリアの有袋類ポッサム(フクロギツネ)など、外来動物の根絶を目指すという壮大なプロジェクトが進んでいる。「鳥の楽園」とうたわれた、かつての豊かで貴重な生態系を取り戻すのが狙いだ。
年間2500万羽が餌に
首都ウェリントン郊外にある野生動物保護区「ジーランディア」。東京ドーム約48個分に相当する約225ヘクタールの広大な敷地には再生させた固有種の木々が茂り、外来動物を寄せ付けないようフェンスが囲む。世界で唯一飛べないオウムのフクロウオウム、赤茶色の背中の羽が特徴的なセアカホオダレムクドリ…。ここは同国随一の、希少生物の「避難所」になっている。
「ネズミ、ポッサム、イタチの3種の哺乳類は国内で年間2500万羽の鳥を餌として食べてしまっている」。外来動物の駆除活動を推進する非営利団体「プレデターフリー・ウェリントン」のウィルコックス代表は説明する。
他の大陸から遠いニュージーランドには、もともと限られた種類の動物しかいなかった。渡ってくることができたのは翼を持つ鳥たち。天敵の哺乳類がいないため地上で過ごすようになるうちに翼が退化し「飛ばない鳥」が増えた。国鳥のキウイはその代表例だ。
ところが1769年に英国人探検家のクックがニュージーランドに到達後、欧州からの入植者が狩猟目的でウサギを持ち込んだ。船から陸に上がったネズミに加え、イタチやポッサムも入り、鳥類やその卵を食べたり餌を奪ったりするようになった。その結果、固有の鳥の多くが絶滅、もしくはその危機にひんしてしまった。
次世代へ引き継ぐ
このためニュージーランド政府は2016年、外来種の根絶計画を表明。全土で取り組みを開始し、年間約7000万ニュージーランドドル(約53億1900万円)を投じている。
これまでにはウェリントンから南に1000キロの絶海の孤島、アンティポディーズ島で、上空から大量の殺鼠剤を散布してネズミ約20万匹の駆除に成功したと自然保護省が発表。ウサギを感染症で死なせるウイルスをまき始めた地域もある。
プレデターフリー・ウェリントンも、ジーランディアを含め首都周辺で、イタチやポッサム用のわなの設置やネズミの巣になる地下の排水溝のパトロールを通して、これまでに数万匹を駆除した。
そのかいあってか、ジーランディアでは固有種の鳥が増え、周辺地域で見掛ける機会も増えたという。
ウィルコックス氏は「人間はあまりにあっという間に生物の多様性を破壊してしまった。次の世代にきちんとした環境を引き継ぐために、今こそ潮目を変えるとき」と表情を引き締めた。(ウェリントン 共同)
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