タクシン人気 農村で健在 タイ総選挙 地方振興策懐かしむ声も

 
タイ東北部ウドンタニ県コーケオ村で機織りをするナリーさん(左)=22日(共同)

 24日のタイ総選挙で、タクシン元首相派のタイ貢献党は親軍政政党に押されたが、なお一定の強さを示した。首相在任中に進めた地方振興政策は、目立った産業のない東北部や北部の農村に希望を持たせてくれた-。こうした地域では今もタクシン氏に感謝する有権者は多く、強固な地盤となっている。

 一村一品運動

 のどかな田園風景が広がる東北部ウドンタニ県コーケオ村。自宅の軒先に置いた質素な木の板に腰掛け、シャラムさんが休みなく機織りを続けていた。散歩中の近所の女性と時折笑顔で雑談を交わすが、完成しつつある織物を見る目は職人そのものだ。

 「タクシンさんが首相だったころは、たくさん売れたんだ。彼には今でも感謝している」と懐かしむような表情を浮かべた。床などに敷くマットは1枚250バーツ(約870円)。70バーツのスカーフも作っている。

 流通を促進させたのはタイ版「一村一品運動」だ。農村ごとに特産品開発を奨励し、現金収入源をつくる狙いでタクシン氏が始めた。コーケオ村では、各家庭に伝わる織物の販売に力を入れ「それまでは個人でほそぼそと売っていたが、村の人と協力して販路を開拓し、売り上げが伸びた」(シャラムさん)という。

 失脚後、年収が半分

 しかし、旗振り役のタクシン氏は2006年のクーデターで失脚。政権が代わって政府の財政支援がなくなると運動は下火になった。流通も停滞気味になり、シャラムさんの妻ナリーさんは「年収が半分になった」とため息をつく。

 村民のまとめ役カムコーンさんによると、タクシン政権時、この一帯の1人当たり年収は3万~4万バーツだったが、失脚後は1万バーツほどに激減した人も。「実業家出身ならではの収入につながる実践的政策が良かった。また首相になってほしい」と待望する。

 ウドンタニで小さな雑貨店を営むピンパーポンさんは、店先にタクシン氏の写真やポスターを飾っている。タクシン氏が導入した30バーツで誰もが治療を受けられる医療制度のおかげで「病気をしたときも生活が崩壊しないで済んだ」と感謝の気持ちを今も忘れない。

 タクシン氏の政策には、ばらまきや人気取りとの批判がつきまとう。だがピンパーポンさんは「他の政権は首都圏や富裕層ばかり気にして地方には目も向けなかった。タクシン氏は農村部の民衆に寄り添ってくれた」と言葉に力を込めた。(ウドンタニ 共同)