問われる日本の脱炭素戦略 世界で強まる潮流 石炭火力固執なら批判も
地球温暖化への危機感から、環境省が石炭火力発電の抑制を図る方針を鮮明にしている。政府は温暖化対策の長期戦略を、6月に大阪市で開く20カ国・地域(G20)首脳会合までにつくる予定で、どう位置付けるかが次の焦点となる。従来の石炭重視の姿勢に固執すれば世界で強まる「脱炭素」の潮流から取り残され、批判を浴びる恐れが強い。
G20までに戦略検討
「石炭火力は環境への大きな負荷要因だ。欧州を含めて各国が真剣に取り組んでおり、G20でも議論になるだろう」。原田義昭環境相はこう指摘する。
G20で議長国を務める日本の長期戦略は注目を集める可能性が高い。現在の検討状況は、政府への提言をまとめる有識者懇談会の議論が続く。昨年12月の前回会合で複数の委員が「石炭火力が日本の評判を下げるリスクとなっている」「ゼロに向かう姿勢が必須だ」と脱石炭の必要性を強調。だが経済界出身の委員などに同調は広がらず、方向性は明確にならなかった。
日本は温室効果ガスを「2050年に80%削減」との長期目標を掲げるが、具体的な手法を示した戦略は未策定。政府は懇談会の提言を踏まえて戦略をつくる予定だ。
経済界の一部には、国内で石炭火力発電所の利用を続け、電力需要が伸びる発展途上国に輸出したい思惑がある。戦略の内容次第で、G20会合でやり玉に挙げられたり、意欲的な合意の妨げになったりしかねない。
廃絶へ異例の勧告
温暖化は深刻だ。世界気象機関(WMO)によると、観測史上気温が高かった上位20の年は過去22年間に集中し、15~18年は1~4位に入る。
20年に始まるパリ協定は温暖化の大きな被害を避けるため今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにし、産業革命前と比べた気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指す。気温は既に1度程度上がったとみられ、今のペースなら3度以上高くなると指摘される。
強い危機感を背景に英国とカナダは石炭火力の廃絶を決め、ドイツ政府の諮問委員会も38年までの全廃を求めた。今年2月には国連の子どもの権利委員会が日本に対し、世界の子供の健康や適切な生活水準を守るため、二酸化炭素(CO2)排出を減らし、他国の石炭火力を支援する政策も見直すよう求める異例の勧告を公表した。
化石燃料に依存する企業から投融資を引き揚げるダイベストメントの動きも世界で加速する。環境保護団体の集計では、引き揚げを決めた機関投資家などの運用資産総額は昨年12月、8兆ドル(約880兆円)に達した。
日本では東日本大震災で原発が止まり、石炭火力発電所の新設や建て替えの計画が相次いだ。環境団体の気候ネットワークによると計画は50件に上るが、その後、13件は中止や石炭以外の燃料への見直しが決まった。環境対策の費用がかさむことなどが理由だ。
気候ネットワークの平田仁子理事は「計画中止は、必要性が疑わしいことに電力事業者もようやく気付き始めたからだ」と指摘する。
石炭火力発電所が新設されれば数十年間、大量のCO2を出し続ける。平田さんは「パリ協定の目標実現には、世界のどこにも新たに造る余裕はない。国内に100基以上ある既存の石炭火力も全廃するべきだ」と話す。
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