【生かせ!知財ビジネス】特許庁、新・知財金融事業の開始へ準備急ぐ

 

 特許庁は今年度、新たな知財金融事業を開始する。金融庁と連携して地方銀行、信用金庫、信用組合などを対象に実施した「中小企業等知財金融促進事業」を継承する新事業として「中小企業知財経営支援金融機能活用促進事業」を創設。従来の「知財ビジネス評価書」に加え、新たに「知財ビジネス提案書」を提供する。金融機関への公募説明会の6月初旬開催を目指して、募集・実施スキーム検討など準備を急いでいる。

 知財金融は、金融機関が知財情報や知財活用的観点を用いて、企業に対する調査および評価を行い、企業の事業実施や価値創造などに貢献し、企業理解と知財支援につなげる活動の総称である。金融庁方針で、担保や倒産確率に偏った評価ではなく、中小企業の成長力を精査する事業性評価への取り組みが求められる中、一つのアプローチとして金融機関で認識され始めている。

 知財ビジネス評価書は、中小企業の成長力の源泉となる技術力と事業力との関係性を金融機関が理解するための定性的評価資料で、金融機関の指定する中小企業を知財の専門家などが無料で調査・面談し作成する。累計214の金融機関が活用。今年度も60案件ほどを予定する。

 新設の知財ビジネス提案書は、中小企業の諸課題に対して金融機関が知財面から解決策を考えるものである。例えば事業力強化、売り上げ増加、新製品開発、新業界進出、下請け脱却、事業承継、企業再生など知財が絡む課題は多数存在する。中小企業が提案書を実践すれば、金融機関を介した知財経営の推進、普及にもつながる。

 普及支援課の小林英司企画調査官は「評価書は健康診断レベルだが、提案書は具体的な解決法の提案。金融機関にはより高い知財への理解が必要になるのでは」とする。募集・実施スキームは(1)評価書作成を原則とし課題を見つけた時点で提案書を加える(2)知財金融の取り組み度を考慮し実施金融機関を決める(3)専門家を金融機関へ直接派遣する形で進める-などの案を検討中だ。今年度100案件ほどの提案書作成を見込んでいる。

 新事業ではこのほか、知財金融普及のため金融機関などを対象にした教育や情報提供を進めていく。大学、金融機関、中小企業支援機関で構成される知財金融委員会(現委員長=家森信善・神戸大経済経営研究所教授)は今後も継続し、知財金融についての論議を進める。(知財情報&戦略システム 中岡浩)