経済成長進む新興国、肥満や糖尿病が社会問題化

 

遅い夕食や運動不足、コンビニも普及

 アジアの新興国で経済成長が進む中、肥満が大きな社会問題となっている。都市部を中心にライフスタイルが大きく変わり、高カロリーな食生活や運動不足によって糖尿病の患者も増加。医療費の増加など深刻な影響をもたらしかねないとして、専門家は警鐘を鳴らしているが、有効な対策は見いだせていない。

 ◆知識とバランス欠如

 約13億の人口のうち、およそ3人に1人が菜食主義者とされるインド。ヨガの盛んな健康大国のイメージがある一方、世界でも屈指の糖尿病大国でもある。国際糖尿病連合によると、2017年のインドの糖尿病患者数は7290万人で、中国に次いで2位。だが45年には1億3430万人となり、中国を抜くと予測されている。

 インドの医療研究機関「全国糖尿病・肥満・コレステロール連合」のアノープ・ミスラ代表は「菜食主義者でも油と砂糖の多く入った食事を好む。知識とバランスの欠如が患者を増やしている」と話す。夕食を午後10時以降にとって直後に寝る食習慣、過酷な気候や大気汚染による屋外運動の妨げも原因という。

 ニューデリー中心部の菓子店では、甘いシロップをたっぷりかけた商品が並ぶ。だが最近では売れ行きが落ち、砂糖の使用を控えた菓子も。店主は「甘いものを控えるより、スマートフォンをやめて運動した方がいいはずだ」と顔をしかめた。

 ◆間食の文化根付く

 ご飯や肉類、ハンバーガー、甘い味付けのスパゲティを炭酸飲料で流し込む…。フィリピンではおなじみの光景だ。炭水化物中心で野菜はほとんど食べない。朝昼晩の食事に加え「メリエンダ」と呼ばれる間食の文化も根付いており、肥満を加速させている。

 保健省によると、糖尿病は今や国内の死因第6位。幹部は「糖分や塩分の少ない食生活に移行しなければ、悪化の一途をたどる」と状況を深刻視する。

 フィリピンでは国内総生産(GDP)の成長率が年6%を超える経済の伸びに伴って「肉食化」が加速。さらにコンビニが急速に普及して、夜中でも容易に食料を調達できるようになり、減量へのギアチェンジは容易ではない。

 また、マレーシアは世界保健機関(WHO)の調査で、20~79歳での糖尿病患者の割合が16.7%と、アジアの中で圧倒的に高い。肥満率の調査でも突出した数字だ。

 クアラルンプールのドーナツ店経営者は「イスラム教の影響で酒を飲まない人が多く、代わりに甘いものの需要が高い」と指摘する。使用するチョコレートや砂糖の量は多め。「味は保証付き。体重や健康さえ気にしなければだけれど」と話した。(ニューデリー、マニラ 共同)