農水産物規制解除の働きかけに優先順位 政府、中国、香港など候補

 

 政府は17日、東京電力福島第1原発事故を受けた日本産農水産品の輸入規制を続ける23カ国・地域のうち、日本からの農水産・食品の総輸入額の上位もしくは規制解除に前向きかどうかを判断基準に規制解除の働きかけを優先的に進めていく方針を発表した。中国や香港、台湾、シンガポールなどアジア諸国が候補で、農水産品の輸出増加にもつながると期待している。福島など8県の水産物の輸入停止を続ける韓国に対しても引き続き理解を求めていく考えだ。

 韓国による8県産水産物の輸入禁止措置を事実上認めた世界貿易機関(WTO)上級委員会の判断を問題視する日本の主張に理解を示す国が増えていることを追い風に、輸入規制の解除に向けた交渉を加速させる。

 香港が昨年、輸入停止にしていた茨城県、栃木県、群馬県、千葉県産の野菜、果物、牛乳、乳飲料について、検査証明書および輸出事業者証明書の添付で輸入可能にするなどしたほか、中国も同年、輸入停止にしていた新潟県産米を産地証明書の添付で輸入可能にするなど、いずれも規制緩和に乗り出した。

 中国、香港、シンガポールとも農水産物の輸入額が多いため、規制が解除されれば他の国・地域へ波及する可能性が高い。政府は、許容内部被ばく線量の年間1ミリシーベルト(食品1キログラム当たり放射性セシウム100ベクレル)の基準を超えた食品が国内で流通したケースがないことや、被災地復興のためにも規制解除は重要な課題として理解を求める。6月の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の場などで働きかける。

 一方、12日のG20農相会議中に行われた2国間協議で、吉川貴盛農林水産相が韓国の李介昊(イ・ゲホ)農林畜産食品相に解除を求めたが、溝は埋まらなかったとされる。今後、WTO敗訴が日本産食品のイメージ回復の妨げにならないよう、韓国との交渉を粘り強く進める考え。

 また、外国人旅行客が国内で被災地の農産品を食べることができる機会を増やすなどして安全面に問題がないことをアピールする。