海外情勢

「死刑廃止」に揺れるアジア スリランカ、40年ぶり執行の動き

 昨年、15人に死刑を執行した日本が海外から強く批判され、国際的に死刑廃止が主流となる中、死刑制度をめぐるアジアの動向が注目されている。スリランカでは、40年以上停止されていた死刑執行を再開する動きがあり議論の的に。一方、麻薬犯罪にも死刑を適用してきたマレーシアが死刑廃止の意向を表明したものの、賛否は割れている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、死刑を廃止した国・地域は2017年末で106。このほか死刑を10年以上執行していない「事実上の死刑廃止国」が29あり、スリランカも名を連ねる。

 だが、スリランカのシリセナ大統領は2月、国会で「1、2カ月以内に絞首刑を執行する」と述べた。違法薬物使用への抑止力とするのが目的で、強権的な麻薬犯罪対策を進めるフィリピンのドゥテルテ政権に触発されたという。法務当局は報酬200ドル(約2万2000円)で、2人の死刑執行人の募集を行った。

 シリセナ氏は昨年から、麻薬犯罪の死刑囚に刑を執行する意向を示していた。スリランカは1976年以降、死刑を執行しておらず、アムネスティは「スリランカにとって大きな汚点となる」と牽制(けんせい)している。

 マレーシアは昨年10月、死刑廃止法案の検討に入り、死刑執行を停止した。地元メディアによると1267人の死刑囚のうち、約900人が薬物関連。17年には少なくとも4人に死刑が執行された。15年には大量の覚醒剤を持ち込んだ日本人女性に対する死刑判決が確定している。

 代替刑として30年以上の刑務所への収容が検討されているが、世論の反応は分かれている。地元紙ニュー・ストレーツ・タイムズが行ったウェブ上での世論調査では、82%が廃止に反対と回答。国会議員などからも慎重な意見が出ており、実際に廃止されるかは見通せない情勢だ。

 隣国シンガポールは、昨年10月に麻薬密売で死刑判決を受けたマレーシア人への死刑を執行しており、死刑維持の姿勢を崩していない。

 テロ対策の強化として14年に死刑を再開したパキスタンでは、執行者数は15年が300人超に上ったが、17年は約60人と減少傾向に。地元非政府組織(NGO)の調査では、14年以降に最高裁が捜査や証拠の誤りを認め467人に無罪や減刑を言い渡しており、死刑判決の85%が対象になったという。

 世界の死刑制度に詳しいハワイ大のデイビッド・ジョンソン教授(法社会学)は「日本が15人を処刑したことは、死刑を存置しているアジアの国にとって、今後も死刑を続けていくことを後押しする材料になった」と指摘している。(ニューデリー 共同)