快走続く中国・新エネ車市場 政府主導で競争力強化、日本勢の脅威に
中国新車市場が成長の転換点に差し掛かっている。2018年の新車販売台数は前年比3%減の2808万台にとどまり、実に、28年ぶりの前年割れとなった。今年1~4月累計でも前年同期比12%減少し、歯止めはかかっていない。今回の減速には3~5級の地方都市での金融引き締め影響に加え、米中貿易戦争による先行き不透明感が消費マインド悪化に拍車をかけている。
4月から増値税(付加価値税)を3ポイント引き下げ、地方では金融緩和処置が進められているようだが、新車販売の回復の手応えは弱い。長期的に中国新車市場が成長を続けるという見方に変化はないものの、低迷から完全に脱却するには2、3年程度かかるのではないかと感じる。中国市場不振の長期化への覚悟と、新たな成長局面での需要ドライバーへ照準を合わせなければならない。
長引く自動車不況の中でも国策として推進される新エネルギー車(NEV)市場は快走が続く。18年の中国NEV市場は前年比61%増の125万台に達した。世界NEV全需に占める中国の占有率は62%に達する。
このNEV市場で最大の市場シェアを有するのは日本でも有名なBYDであるが、こと電気自動車(EV)市場に限ればトップメーカーの地位を固めるのが元国営企業の一角であった北京汽車集団である。ダイムラーベンツ、現代自動車との合弁を主力に置く業界第5位の集団である。
北京汽車集団のNEV事業の中核にあるのが北汽新能源(BJEV)である。筆者は5月末の中国市場視察において、山東省青島市の郊外に位置する莱西姜山工業園のBJEVの最新鋭EV専用工場を訪れた。
青島市といえば、青島ビールで有名な港湾に面する文化都市のイメージが先行する。ところが、ここは近代的な製造業やハイテク産業基地として急成長が著しく、中でもEV生産基地として特出している。近い将来、BJEV、上海VW、恒大集団などで100万台以上のEV生産基地を確立する計画を持っている。BJEVは今年4月に第2期工場の操業が始まり35万台のEV専用の生産能力を確立した。第3期が完了すれば60万台のEV生産能力を有する。
この地に参入するのが不動産大手である恒大集団だ。米国のEV新興メーカーのファラデー・フューチャーを買収し、スウェーデンのEV製造会社のNEVS、オランダのモーター会社などを買収し、EV製造の新勢力を目指す。青島地域へも100億人民元(約1600億円)を投資し、完成車に加え、3電と呼ばれるバッテリー、モーター、インバーターの生産を実施する。青島市は巨大なEVサプライチェーンの基地となるだろう。
短期的に、NEV市場には逆風が予想される。補助金頼みのNEV市場の改革を中国政府は断行する考えだ。コスト低減に裏付けされた供給型の市場への転換をもくろむ。この結果、19年から20年に向け、NEV補助金は公約通り大幅削減が実施される方向である。厳しい生き残りへの競争を促し、力を持ったNEV製造会社を研鑽(けんさん)し、国際競争力を有する産業へ育成する考えである。短期的に、中国NEV市場の苦悩が聞こえてくる可能性が高い。
しかし、「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」かのような厳しい政策から生まれ出てくる電動化大国としての中国パワーを侮ることはできない。ディーゼルゲート以降、世界で独り勝ちの日本のハイブリッド技術に安穏とする国内自動車産業は油断大敵である。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に「CASE革命」など。